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「あなたの失敗を社会の財産に」 松永さんの思いに飯塚受刑者は

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刑務官(手前)と対面する松永拓也さん=関東地方で2024年3月22日午後0時47分、宮本明登撮影
刑務官(手前)と対面する松永拓也さん=関東地方で2024年3月22日午後0時47分、宮本明登撮影

 「初めて本心を伝えてくれた」。2019年4月の池袋暴走事故の遺族、松永拓也さん(37)は、妻真菜さん(当時31歳)と長女莉子ちゃん(当時3歳)の5回目の命日を前に一通の書面を受け取った。そこには、事故を起こした飯塚幸三受刑者(92)が、松永さんの問いかけに対し、謝罪する様子が記されていた。

写真特集・2人の書面でのやり取りは? 返答を読む松永さん

 松永さんは、被害者の声を刑務所などの職員が聞き取り、加害者に伝える「心情伝達制度」を利用して、飯塚受刑者とやりとりした。

 飯塚受刑者が収監されている関東地方の刑務所を訪れたのは3月22日。「命を奪いたくて奪ったわけではないことは分かっているが、真菜と莉子のことは忘れないでほしい」。緊張した面持ちで応接室に入り、聞き取り役の刑務官と2時間超にわたり話した。

 答えやすいように、直接尋ねたかったことを八つの質問にして伝えた。高齢ドライバーの事故が繰り返されないようにとの思いを込め、加害者の認識を聞いた。

 刑務官が松永さんの話をまとめた書面はA4判で2枚になり、こう締めくくられた。

 「あなたの失敗を社会の財産にしてほしい。被害者と加害者という立場を乗り越えて、『自分と同じような被害者も加害者も生まれてほしくない』という視点を一緒に持ちませんか。私にとってはもうそれしか救いがない。2人の命は戻らないから。あなたにとっても救いになるのではないでしょうか」

「運転しないことが大事です」

 15日後、飯塚受刑者の返答が書面で届いた。刑務官が…

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