MOROHA、盟友SUPER BEAVERとの約束を大阪で果たした一生に一度のライブ『MOROHA自主企画「怒キュン」第二回』レポート

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MOROHA自主企画「怒キュン」第二回 撮影=日吉“JP”純平

MOROHA自主企画「怒キュン」第二回 撮影=日吉“JP”純平

『MOROHA自主企画「怒キュン」第二回』2024.3.14(THU)大阪・なんばHatch

MOROHAが3月14日(木)、大阪・なんばHatchで『MOROHA自主企画「怒キュン」第二回』を開催した。

同イベントは、昨年の2月14日=バレンタインデーに東京・LIQUIDROOMで行われた第一回に引き続き、SUPER BEAVERが出演。同時にこの日は、MOROHAが出演予定であった2020年3月14日=ホワイトデー、大阪・梅田クラブクアトロでのSUPER BEAVERの自主企画『お返しもギンギン!~今日は土曜日!明日は日曜日!~』がコロナ禍により中止となったため、事実上のリベンジ公演とも言える日となった。
(※当時の対談記事はこちら:https://spice.eplus.jp/articles/263496

SUPER BEAVER

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ぎっちぎちに埋まったなんばHatchに鳴り響く、Cap’n jazzの「Tokyo」とともに加速する鼓動と盛大なクラップが出迎えたのは、この日のゲストであるSUPER BEAVERだ。渋谷龍太(Vo)が「大阪、準備はできてるか?」と一言掛ければ瞬時に着火する場内のテンションに、1曲目の「青い春」からこの熱量かと末恐ろしくなる。渋谷がそこにガソリンを投入するかのように容赦なくアジテートし続けた上で、自身の過去最大のアリーナツアーで仕上がりに仕上がった状態のライブバンドが放った「ひたむき」が、ぶっ刺さらないわけがない。今やイベントに出てもトリを飾ることが多いSUPER BEAVERだが、彼らにこうやって先陣を切られると、後に出るアーティストは相当な覚悟を決めなきゃならないことを、たった2曲で徹底的に思い知らされる。

SUPER BEAVER

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「年に一度MOROHAとバレンタインデーにツーマンをしておりまして、それをずーっと続けてきたんだけど、「3月14日は俺たちがもらう!」とホワイトデーに大阪でツーマンを組んだのが、ちょうどあのコロナ禍に入る頃で……。楽しみにしてたんだよ俺らも! でもまぁ、あのときはいろんな判断や考えがあって。こうやって復活できた、このイベントが一緒にできたのはとってもうれしいことなんだけど、ホントはね、俺たちの冠でやるべきだったんだよ(ごもっとも!)。だから今日は、『怒キュン』とかいう名前になっちゃったの(笑)」(渋谷)

「大丈夫だよぶー(=渋谷)、仮に俺らの冠でも、たいしたタイトルにはなってない(笑)」
(柳沢亮太/Gt)

「みんなタイトルってどうやって付けてるんだろうね?(笑) 今日は俺らとMOROHAなんで相当暑苦しい日になると思うから、ペース配分は「考えずに」よろしくお願いしますね。真正面から殴り合える友達がいて良かったなと思ってるんで、今日は最高な日にしようと思ってます。何が言いたいかと言うと、全然足りねぇからもっと来い!」(渋谷、以下同)

SUPER BEAVER

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そう言われてアガらないヤツがどこにいる!? 見渡す限りの拳が突き上がった「突破口」に続いて、「決心」でも威風堂々のたたずまいで歌を届け、ライブのボルテージをぐんぐん引き上げていく。その勢いのまま渋谷が「もっとデカい拍手をくれ!」と叫んだアウトロのマキシマムな音像から、藤原“35才”広明(Dr)がビートを刻むミニマムな音量へと急降下した瞬間、次の曲を察した観客から思わず声が上がる。そこに柳沢のアルペジオ、上杉研太(Ba)の重たいベースラインが合流していく先にあったのは「27」。リリースから8年の時を経てより強靭に響くバンドサウンドとメッセージが心臓を貫く。一転、さっきまでの喧騒から、深紅の光に染まった4人に送られる真剣なまなざし。感動の名バラード「儚くない」が、ささくれだった心に優しく優しく染みわたっていく。

SUPER BEAVER

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降り注ぐ喝采に身を委ねながら時折、渋谷はぎゅうぎゅうの客席を気遣い、「俺たちはあなたが楽しいと思う時間を100%守るから、あなたが隣の人の楽しいまで守ってあげられたら、みんなが120%ぐらい楽しくなると思う。力を貸してね」と語り掛け、こうも続ける。

SUPER BEAVER

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「当時は若手同士で尖ってた仲間で、お互い真っすぐなんで衝突するんですよ、それぞれに貫かなければいけない形があるから。今は丸くなったとは決して思わないけど、「あいつらカッコいいな」と認めることができました。おかげで俺にとっては数少ない友達の一人です。あいつ(=アフロ/MC)には唯一の友達だろうけど(笑)。どれだけ話し合ったところで、腹の底の底までは絶対に分からない。それでも分かりたい、知れたらいいなと思います。そこは想像力を使っていきましょうよ。それが人にとっては友情なんだと思うし、愛情なんだと思う。分からない部分を考えることが、思いやりになると思ってます」

SUPER BEAVER

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このバンドを信じて良かったと心底思える信頼感と安心感に満たされた「幸せのために生きているだけさ」、渋谷の「伝わってますか大阪!」との咆哮に、なんばHatchを包囲する最大級の「愛してる!」が応えた「アイラヴユー」、そして、「めちゃくちゃいいけど、どんどん更新したいんです。ジャンルとか世代とかどうでもいい。カッコいいヤツが一番強いんだよ」と突入した「東京流星群」では、そのいざないとイントロですでに鳥肌。有言実行でピークを超えていく、サビでの感情の爆発がもう最高!

SUPER BEAVER

SUPER BEAVER

渋谷もそのシンガロングに「完璧!」と太鼓判を押すムードのまま、「我々のマスターピース(=最新アルバム『音楽』)の幕開けを飾る一曲!」と、This is SUPER BEAVERなアンセム「切望」へ! このバンドはいったいどこまでロックの頂を這い上がっていくのか……もはや完全にワンマンライブな空気の中、すさまじいエネルギーを放出しながら一心不乱にクライマックスへと駆け抜けていく!

「今日の持ち時間は、お互い一対一の60分ずつなんです。でも、俺たちの残り時間はあと2分(笑)。ただ、アフロに「(ちょっと押しても)いいよ」と言われたんで。俺たちの一対一はいつでも揚げ足取り合戦だから、絶対にチクチク言われるけど(笑)。それを凌駕するぐらい、最高の一曲を最後にやっていいですか? 俺たちで起こそうぜ!」

SUPER BEAVER

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藤原のどっしりとしたドラミングから始まったのは、「小さな革命」。<当事者であれ>と訴え掛け、人生のキッカケをもたらすSUPER BEAVERの音楽。さぁ最強のトップバッターを前に、MOROHAはどう挑む!?

SUPER BEAVER

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MOROHA

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大きな舞台からアンプやドラムセットが取り払われ、だだっ広い漆黒の空間にUK(Gt)の鎮座する小上がりと、ドリンクが置かれた小さな箱馬が一つ。殺風景なそこにふらりと現れた2人は、顔を見合わせ始まりのときをうかがう。白い閃光とUKのつまびく鋭利なギターを背に、ライブの幕開けを飾るヒリヒリするような口上、「チャンプロード」からスタートした今宵の真打は、MOROHAだ。

MOROHA

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アフロが「俺たちのライブ、一緒に歌ったりとか、手拍子とか、ホントにないんで。ここで一発だけ、皆さんの声をもらっていいでしょうか? 乾杯の音頭を取るので。せーの!」と呼び掛け、フロアが「乾杯!」と返したのもつかの間、MCと地続きの物語で楽曲の世界に没入させたのは「革命」。SUPER BEAVERの熱狂とは打って変わった静寂の下、壮絶なリリックを浴び、その場に立ち尽くすオーディエンス……。

「イベント名をディスった上に時間を押す、不届き者はいねぇか~。元々はSUPER BEAVERが3月14日に大阪で、自主企画に俺たちを呼んでくれて。でも、コロナで流れちゃったから、「また次の機会で」と……。「きっと誘われるんだろうな、バレンタインデーかな?」と思ってたら今年、あいつらがその日に別のライブを発表して……だから、しびれを切らしてこっちからオファーしました。こういうときって負けた気になるというか、こっちがすごく好きみたいじゃん? 別に好きじゃない、ていうのはうそで、俺らは大好きなバンドとツーマンライブができて、心からうれしいなと思ってます。ついでに言うと、オファーをもらうよりオファーを出す方が、受け取るより手渡す方が、カッコいいと思ってる自分がいます。何せ今日は3月14日、ホワイトデー。カッコいいことをやらせてもらっていいですか? 親愛なるSUPER BEAVERへ、親愛なる大阪へ、親愛なるお前へ。言いたいことはただ一つ、「俺のがヤバイ」!」(アフロ)

MOROHA

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そんなシビれる導入から畳み掛けた「俺のがヤバイ」では、アフロの一挙手一投足とジャストにシンクロするUKのギターと照明がドラマを際立たせる強烈なパフォーマンスで、なんばHatchを完全にロックオン! そのあまりの気迫に「前方のSUPER BEAVERのファンであろう女の子が、絶賛おびえております。つじつまを合わせるようで恐縮ですが、ありったけのラブソングを」とアフロが告げ、ノスタルジックな情景が脳裏に浮かぶ「エリザベス」へ。UKの奏でる切なき音色に連れられて、じんわりと温かな気持ちが胸に去来する。

MOROHA

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満場の拍手を受け、「俺たちのライブを初めて見る方もいらっしゃるかと思うんですけど、「一番疲れる」と言われます。さっき好感度欲しさにあいつ(=渋谷)が何か言ってましたけど、もし周りに具合が悪そうな人がいたら言ってくださいね」と、アフロが渋谷さながらの言い回しをする光景もほほ笑ましい。

「優しさを発揮できるかどうかって、俺は人生において戦いだと思ってます」とアフロが述べた「うぬぼれ」も、演奏後に「皆さんの心の声を代弁していいですか? ……いい曲」とおどけたのがうなずける一曲。かと思えば、「だけど、いい曲じゃ救われないヤツがいる。ラブソングじゃ届かないヤツがいる。俺は地獄みたいなライブハウスで戦ってきたからよく知ってる。じゃあこの曲で迎えていってやる」とアフロが続け、「命の不始末」を披露。歌詞も、MCも、口から出る全ての言葉に意志が宿るMOROHAのライブには、魂を揺さぶられっぱなしだ。

MOROHA

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MOROHAの自伝とも言うべき「四文銭」では、マイクを握り締めステージの最前線で絶唱するアフロの姿が、何度も何度も一生に一度の夜を越えてきた男たちの叫びが、問答無用に突き刺さる。そこにもう、おびえる者はいない。なんばHatchに集まった幾つもの熱い視線が2人に注がれる。

ここで、「俺は普段ワンマンのときしかしゃべらないんですけど」とUKが口を開き、「渋谷くんもアフロもそうだけどさ、あたかもここでは大事なことしか言っちゃいけないみたいな空気を出すじゃん? 俺はそこから一番遠いところにいるから、申し訳なくなっちゃってさ……元気?」というたわいない問い掛けに大いに沸く会場。一方、アフロはアフロで、「2月14日にSUPER BEAVERがライブを入れててマジか、最低だなと思ったんだけど、俺もちょうど予定が入ってて。映画『さよなら ほやマン』の授賞式がございまして(※『第78回毎日映画コンクール』でスポニチグランプリ新人賞(男性)をアフロが受賞)、俺はそのとき、広瀬すずの横に立ってました! さっき俺には友達がいないと言われましたけど、俺には広瀬すずがいます」と笑いをかっさらう。

MOROHA

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後半戦は「Salad bowl」の溢れんばかりの愛と絶叫に圧倒される幸福を経由し、歌詞の一節を<大阪 なんばHatch>と変えた「六文銭」で、こらえ切れない涙と立ち上がる勇気を見る者に授ける。

「今日は実は覚悟の日で。俺たち、なんばHatchで初めてやるの。大阪のこんなデカい会場でライブをしたことがなくて。じゃあ何で今日はできたかって、野暮なことを言うけど、やっぱりあいつらは突っ走ってる、ぶち抜いてる。すごいな、悔しいなと思う。でも同時に、ありがたいなと思うのは、世の中の売れてるバンドは全部カッコ悪い。ダセぇ。そう思ってた俺たちの、諦める心を奪ってくれた。「あいつらが売れるんだったら……!」って、諦める理由を一つ消してくれた。今日だって、俺たちのライブが始まる前に、SUPER BEAVERを見に来たお客さんが帰っちまったら、もう二度とツーマンライブはできないなと思って、めちゃくちゃ怖かった。だから、残ってくれたあなたに精いっぱいの演奏で返したい。いつだって俺たちは、呪いの言葉をかき消すようにもがきながらやってきた。だけど、寝る前に枕元であいつがこうささやく」(アフロ、以下同)

MOROHA

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「やめるなら今だ」は、現在進行形のMOROHAを刻み付けた新曲。迫りくるリフレインと崖っぷちのリアルさに、自らの人生を重ね合わせた人もきっと多かったことだろう。ラストも「ありがとう、心を込めて」と新曲「愛してる」を。わずかな希望も、多くの迷いも、まだ見ぬ未来も、歌にして。

「みんなにたくさんいいことがありますように、ありがとうございました」と深々と頭を下げたMOROHAだったが、やまないアンコールにアフロが再び現れ、最後の最後にこう思いを伝える。

「もうこれ以上やれないってぐらいやれたのは、皆さんが集中力を持って向き合ってくださったおかげです。アンコールがなかったことが皆さんの誇りになる日だと思ってます。もっと聴きたいという気持ちは、もっと生きたいという気持ちに変えて、どうか自分たちのライブに帰ってください」

MOROHA

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MOROHAのPA宛てのセットリストの脇には、「一生で一度のライブ、よろしくお願いします」の走り書き。間違いなくこの日はそうだった。これからもMOROHAとSUPER BEAVERは、一生に一度のライブを積み重ねていく。

MOROHA、SUPER BEAVER

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取材・文=奥“ボウイ”昌史 撮影=日吉“JP”純平

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