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テレビ業界のハードワークは、なぜ無くならないのか小寺信良の「プロフェッショナル×DX」(1/4 ページ)

» 2024年04月16日 15時50分 公開
[小寺信良ITmedia]

 この連載ではこれまで、主に映像・放送技術のDX化についてフォーカスしてきたが、そもそもDXとは、人の働き方改革とセットの話である。今回はテレビ業界の働き方について、DXによる働き方改革は起こりうるのかを考えてみたい。

 映像業界は数多くあるが、特にテレビ業界の過酷な労働は、「AD哀史」といった格好で多くの人に知られる事となった。そこでテレビ業界では、AD(アシスタントディレクター)という名称を廃止し、YD(ヤングディレクター)、LD(ラーニングディレクター)、ND(ネクストディレクター)といった名称に変更する動きになっている。

 気持ちは分かる。筆者がテレビ業界のど真ん中で仕事をしていたのは1983年から2000年を少し過ぎたあたりぐらいまでだが、当時のADとはディレクターの見習いといった要素が強かった。LDやNDといった呼び方も、その当時の業界構造であれば理解できるところだ。

 テレビ番組には多くの人が関わっているが、大きく分ければ制作系か、技術系に分類できる。制作はプロデューサーやディレクター、ADなどの演出に関わる部分で、技術系は撮影、照明、編集、MA、送出など、エンジニアリングに関わる部分である。制作と技術は会社や組織構造が別になっており、ある意味それぞれから人を出し合ってチームを作って、番組を担当する事になる。

 技術者でもっともハードワークなのは編集で、筆者はこの仕事を数十年続けてきた。以前何かの記事に、「1度出社すると翌朝の9時まで徹夜勤務が続く」と書いたところ、Twitter(現X)には「まあそれは大げさだけど」と信用してもらえなかった。今の人には、信じられない勤務形態だろう。だが80年代のテレビ業界では、番組1本の編集が終わるまで編集者は交代できないので、何かのトラブルがあって翌朝までで終わらない場合は、そのままその日のお昼や夕方まで寝ずに編集をするという事もあった。1カ月の残業時間はだいたい160〜180時間で、200時間を超える事もあった。

 ただこうした労働形態は著しく労働基準法の範囲を超えるということで、労働基準局の監査が入ったポストプロダクションもあり、業界全体としては改善傾向にある。現在は編集作業をディレクターが行うケースも増えており、以前ほどハードワークが連発という状況ではなくなっているようだ。

 技術職は基本的に、自分のパートが終われば次のプロセスの人に引き継げる。一方制作系の人達、特にディレクターとADは番組の頭からシッポまで立ち会わなければならないので、いろんなプロセスの過重労働全部に参加させられてしまう事になる。

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