「みんなにもっと良い景色を見せたい」帝国喫茶、自主企画『喫茶店の日』でトーク&弾き語り&ライブーー未来への約束を誓った、特別な1日に

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帝国喫茶『喫茶店の日』2024.4.13(SAT)大阪・なんばHatch

日本で初めて喫茶店が開業したことから”喫茶店の日”と制定されている4月13日(土)に、帝国喫茶がライブイベント企画『喫茶店の日2024』を大阪・なんばHatchで開催。バンド名にちなんで、昨年の梅田に引き続く2回目の実施となった。

この日は、入場者全員にオリジナルジャケットのドリップコーヒーが配布された。オリジナルジャケットは、帝国喫茶のアートワークを担当するアクリ(Gt)が今回のイベントの為に書き下ろしたイラストで、会場エントランスではアクリが手掛けてきたイラストの展示会も行われ、開場中に多くの観客が観覧していた。また、メンバー全員で考えたオリジナルドリンク「帝国喫茶のクリームソーダ」と、会場・数量限定のメンバー手刷りTシャツも販売されるなど、開演前から特別感が伝わってくる。

今回は2部構成になっており、第1部はトークパートに。今回のイベントに向けて、大阪のラジオ局・FM802『EVENING TAP』で期間限定コーナー「喫茶 彩」をOAしていたことから、番組DJである田中乃絵が司会進行で参加。メンバーの杉浦祐輝(Gt.Vo)、疋田耀(Ba)、杉崎拓斗(Dr)、アクリが全員参加でトークを繰り広げた。「FM802 EVENING TAP~出張編~」と題された、観客&リスナーの目の前でのトークはまるで公開録音のような雰囲気に。

「この放送は、この会場のみです!」という田中の説明の通り、来場した人たちしか聞けないというのもライブならではで素敵であった。ちなみにスクリーンには帝国喫茶の喫茶店でメンバーが横並びに座るアーティスト写真が映されたが、よく見ると、その並びで、そして同じ衣装で4人が座っている。こういう細かい演出もたまらない。

帝国喫茶は3人のメロディーメイカーが存在することが強みであるが、最新EP「ハロー・グッドバイ」から杉浦、疋田、杉崎が自身の作詞作曲する楽曲を弾き語りで披露するコーナーも見ものであった。弾き語りトップバッターは杉浦。杉浦が「東京駅」を歌い出すと、緩やかなトークの雰囲気から場が驚くほど一変する。流石ボーカリストというだけあって、柔らかくも力強い歌声が大きな会場に響き渡り、威風堂々とした佇まいが印象的であった。

続いて、杉崎は「ハル」を歌うことに。「人前で歌うのは、前回の『喫茶店の日』以来の2回目です」ととても緊張もしていたが、自身が楽曲に込めた想いを一途に歌う。最後は疋田によって「さよならより遠いどこかへ」が歌われる。音源よりミドルバラッドの要素が濃く抽出されたアレンジは、まさにここでしか聴けないレア感があった。一瞬、最初のデモアレンジなのかとも思ったが、そうではなくて、この日の為のアレンジであり、その心意気も嬉しかった。

その後は、FM802『EVENING TAP』期間限定コーナー「喫茶 彩」のために、疋田がピアノで作曲したオープニングテーマが流れたり、番組でも話題になっていたメンバー想い出の喫茶店についても語られた。また、会場で募集した観客からの質問に応えるコーナーでは、寄せられた質問「19歳へのアドバイス」についてトーク。自分たちの19歳時代を思い出したりしながら答えていく。観客のラジオネームをいじったりするなど、まさに観客との直の交流で微笑ましい時間だった。(質問が選ばれた観客には、番組のリスナープレゼントとして特注された帝国喫茶とのコラボグラスがプレゼントされた)

アクリに焦点を当てる流れでは、アクリのジャケットイラストのメイキング工程をスクリーンで紹介していき、なぜかカラオケでaikoの「milk」を熱唱するシーンも! アクリ独特の曲紹介は、この日一番の大爆笑を巻き起こしたと言っても過言では無かった! 最後はメンバー手刷りTシャツの制作工程映像も上映されるなど、一貫して祝祭感に包まれた穏やかな時間となった。

第2部は、3月から開催しているワンマンツアー2024『きみの待つ場所へ春のメロディーを』のバンドセット楽曲を中心にライブを披露することに。1曲目「貴方日和」から、観客は第1部とは全く違うテンションで、のっけから手を上げて楽しむ。すでに前半で弾き語りライブを行なっていたこともあり、観客フロアは温まっている。続く「and i」でのアップビートになるところでは、観客から大きな歓声も起きた。

杉浦いわく「先週までツアーをやっていて最高なんで、一番良い状態を楽しんでいって下さい!」の言葉通り、「blue star carnival」、「夏の夢は」、「マフラー」、「季節すら追い抜いて」など、テンポ良く勢いをもって鳴らされていく。まだ序盤ではあるが、一気に駆け抜けていく姿には爽快感しか感じない。ワンマンライブとしては最大規模であるが、杉浦の弾き語りから気付いてはいたものの、とにかく杉浦は、帝国喫茶は、大きなステージが本当に似合う。若くして、この大規模なステージが似合っているのは、とても頼もしい。

「最高です! みなさん! 結構、熱いなぁ!」と杉浦もテンション高くなっていたが、ここで「いつもと違うことをする日なので、僕らのルーツになった曲をカバーしたいと思います」という説明から、andymori「すごい速さ」、Yogee New Waves「Climax Night」も歌われる。

杉浦がハンドマイクに持ち替えて「すごい速さ」を歌い出すと、場は狂気歓喜のモードとなり、飛び跳ねまくる観客も現れたほどのハイボルテージに。杉浦がギターを持ち直して歌う「Climax Night」では、先程の「すごい速さ」が動であれば、静を感じる時間となった。帝国喫茶がパンキッシュとメロディアスという両面を持ち合わせた稀有なバンドであることも再認識できる。「喫茶店の日」ならではの貴重なセットリストであった。

中盤では、杉浦がツアー終了後から曲作りを始めていることを明かした。曲作りは自分とのコミュニケーションで自分と喋りながら作っていく中、思い浮かぶのはメンバー、観客、スタッフなど自分の周りの人であり、そうやって自分の曲はみんなのことを想って作っていると語る。このようにしっかりとみんなへの心情を吐露してから、情感たっぷりに歌い上げられた自身作詞作曲の「君が月」は、杉浦を凝視して聴き惚れるほどに素晴らしかった。

そこから終盤の「春風往来」、「じゃなくて」「燦然と輝くとは」、「カレンダー」、「ガソリンタンク」と畳みかける衝動性も圧巻であった。特に「春風往来」での舞台狭しと端から端まで動き回る杉浦には観客全員の目が釘付けであったし、最後にシャウトする場面では、観客全員も一緒にシャウトしていて誠にエモーショナルなハイライトシーンに……。そして本編ラストナンバーは、最新EP「ハロー・グッドバイ」オープニングナンバーでもある「さよならより遠いどこかへ」が歌われる。疋田がミドルバラッドなアレンジで弾き語った後だけに、バンドアレンジでの迫力は極致に達していた。

アンコールでも「さよならより遠いどこかへ」の流れに沿って、最新EP「ハロー・グッドバイ」から「ハル」、「東京駅」、「ロードショー」が歌われる。杉浦が作詞作曲を手掛けた「東京駅」のエンドがメンバーの美しいコーラスで終わっていくのは、よりバンドであることを感じる一場面でもあった。「みんなの顔が観れて、僕らも満たされた気分になりました!」という杉浦の言葉に全てが凝縮されていたが、アクリ、疋田、杉崎も自分の言葉で観客に純粋な愛を伝えていく。さらに杉浦は初めて帝国喫茶としてライブハウスで音を鳴らした日を「ビリビリッっときた……」と振り返り、ずっとみんなのことを想って、みんなに届けたいと想っていることも踏まえて、こう誓った。

「もっとみんなに良い景色を見せたいと思うので、来年、再来年、20年後、50年後も……僕にとって大事な場所であり、みんなにとっても大事な場所である帝国喫茶という場所を守り続けていきます」

そして杉浦より嬉しい報告も伝えられた。それは7月・8月・9月と3ヶ月連続でシングルがリリースされ、心斎橋Music Club JANUSで7月3日(水)・8月6日(火)・ 9月6日(金)と3ヶ月連続で『帝国喫茶 マンスリーライブ 2024 LOVE & PEACE & MUSIC IN OUR NEW WORLD』が開催されるということ。オフィシャル先行予約は来週4月24日(水)12時よりイープラスにて開始となる。

アンコールラストは、「最後に僕らの始まりの曲を歌って終わります。コロナ禍の時に作っていた曲で、早くみんなと歌いたかった曲です」という杉浦の言葉から「夜に叶えて」へ。最初の歌い出しから、杉浦は観客全員に歌ってもらうように促して、サビのパートでは自分のセンターマイクを観客の方に向けて歌ってもらう。帝国喫茶が結成された2020年夏に初めて作られた記念すべき楽曲が〆という意義を強く感じる。とにかく、この日は杉浦が、いつも以上に観客という“みんな”に向けて、全身全霊で帝国喫茶の音を届けていた。冒頭にも書いたが、自主企画だからこその特別感が本当に伝わってくる催しであったので、来年、再来年、20年後、50年後も、ずっと続いていって欲しい。

取材・文=鈴木淳史 写真=オフィシャル提供(撮影:岸岡なつ)

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