テイラー・スウィフトさんも被害に 「なりすまし広告」の海外事情

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テイラー・スウィフトさん=AP 拡大
テイラー・スウィフトさん=AP

 著名人の画像や名前を使った「なりすまし広告」による詐欺被害が国内外で深刻化している。自身の写真を用いた広告をフェイスブックなどのSNS(ネット交流サービス)に無断で掲載された衣料通販大手「ZOZO」創業者、前沢友作さんは10日にあった自民党の勉強会で、運営する米メタ(旧フェイスブック)に抗議し、提訴の準備を進めていることを明らかにした。海外では実際に、メタの運営責任などを問い、訴訟に発展したケースもある。

 有名人の「なりすまし詐欺」は英語で「セレブリティー・スキャム」と呼ばれる。映像や写真を勝手に利用したりAI(人工知能)で作成したりして有名人になりすまし、オンライン投資を呼びかける詐欺や恋仲にあると錯覚させて金を貢がせるロマンス詐欺もある。

 米ニューヨーク・タイムズ紙によると、2024年1月、米歌手のテイラー・スウィフトさんになりすました「詐欺広告」がフェイスブックで拡散された。

 高級調理器具メーカーの訳あり商品を送料のみでプレゼントするという内容。だまされて個人情報を記入すると、約10ドル(約1530円)の送料を毎月盗み取られる仕組みだったという。

 メーカー側とテイラーさんがすぐに関係を否定し、広告は削除された。

 企業家のイーロン・マスクさんやネット通販大手アマゾン・コム創業者のジェフ・ベゾスさん、俳優のトム・ハンクスさんらも「なりすまし詐欺」に利用されたことがあるという。

 米連邦取引委員会が24年2月に発表した消費者詐欺に関する報告書によると、米国では23年の1年間に260万件の詐欺被害の届け出があり、被害総額は100億ドルを超えた。

著名人がメタを提訴

自民党本部での勉強会を終え、記者団の取材に応じる前沢友作さん(中央)=東京都千代田区で2024年4月10日午後6時19分、北山夏帆撮影 拡大
自民党本部での勉強会を終え、記者団の取材に応じる前沢友作さん(中央)=東京都千代田区で2024年4月10日午後6時19分、北山夏帆撮影

 海外では、「なりすまし」に利用された著名人が訴訟を起こしている。

 欧州のテレビ番組「ユーロニュース」などによると、オーストラリアの鉄鉱石大手フォーテスキュー・メタルズ・グループ(FMG)のアンドリュー・フォレスト会長は21年、自分の画像を無断使用した仮想通貨(暗号資産)詐欺の広告を掲載し続け、名誉を傷つけられたとして、メタの本社がある米カリフォルニア州で損害賠償請求訴訟を起こした。

 米国にはSNSに投稿された第三者のコンテンツについてプラットフォーム側の責任を免除する法律がある。だが、フォレスト会長はメタ側は詐欺広告から広告収入を得ていることなどを挙げ、「法律は適用できない」と主張し、現在も係争中だ。

 アイルランドのアイリッシュ・イグザミナー紙によると、米歌手のジャネット・ジャクソンさんの元夫で、実業家のウィサム・アル・マナさんも20年、「なりすまし詐欺」で名誉を傷つけられたとしてメタの欧州連合(EU)域内の拠点となっているアイルランドで提訴した。

 メタは23年、アル・マナさんに謝罪。詐欺防止の技術開発のために多額の資金を提供することなどで和解したという。【國枝すみれ】

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