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新SNSの技術とコミュニティーの未来を模索 「Bluesky」交流イベントの様子

» 2024年04月15日 11時53分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 新しいSNS「Bluesky」(ブルースカイ)のユーザーや開発者らによる交流イベント「Bluesky Meetup in Tokyo」(ブルースカイ ミートアップ イン トーキョー)が4月13日午後、東京・紀尾井町のLINEヤフー本社で開かれ、会場とオンラインで約200人が参加した。米Bluesky社の開発者、ジェロミー・ジョンソン氏が来日して登壇したほか、同社のジェイ・グレイバーCEOもオンラインで参加。来場者からの質問に答えたり、ゲストとパネルディスカッションを行ったりして議論を深めた。

photo 「Bluesky Meetup in Tokyo」のパネルディスカッションで意見を交わす米ブルースカイ社の開発者、ジェロミー・ジョンソン氏(左から2番目)ら

Xの対抗馬として注目

 ブルースカイは、Twitter(現X)の共同創業者、ジャック・ドーシー氏らがアメリカで立ち上げた新しいSNSで、Xの対抗馬や代替サービスとして注目を集めている。2023年初めに提供が開始され、日本語にも対応している。

 当初は会員になるために招待コードが必要だったが、24年2月に招待制が廃止されて利用者が急拡大。ブルースカイ社によると、特に日本での登録が増えたという。現在、登録ユーザー数は全世界で約550万人、実際に投稿した人も約260万人。

 技術面では、XやFacebookのようにひとつの企業が中央集権的に管理する仕組みとは異なり、ブルースカイは多数の個人・グループがそれぞれのサービス領域を構築して運営を担うことができる「分散型(分権型)」のSNSであることが大きな特徴だ。画面上の見た目はXによく似ているが、1社で集中的に管理されているのではなく、運営者の連携によってサービス全体が成立している。

photo パネルディスカッションに登壇したジョンソン氏(中央)、徳力基彦氏(左から2人目)、ハンドルネーム「山貂(やまてん)」氏(右から2人目)と、オンライン参加したNighthaven氏(スクリーン中央)、グレイバーCEO
photo 報道陣の囲み取材に応じるジェロミー・ジョンソン氏

自由でオープンな仕組みのSNS

 パネルディスカッションでは、ブルースカイと他のSNSとの違いについてグレイバーCEOが「ブルースカイはオープンな仕組み。投稿や表示をカスタマイズする機能も提供している。そこが際立った違い」とアピール。

 ジョンソン氏は、ブルースカイの公式アプリについて「開発者が異なる仕様にして自由に使うことができる。アプリに多様性を持たせられる」と説明した。

 パネリストとして登壇したnoteプロデューサーでブロガーの徳力基彦氏は、「開発者のコミュニティーがオープンなところ」が他のSNSとの最大の違いだと指摘。「これから何か新しいことが始まりそうだ」と、ブルースカイのサービスやコミュニティーの発展に期待を寄せた。

収益確保や健全な利用環境維持が課題

 ブルースカイは新しいオープンな運営形態を追求している一方、課題も少なくない。

 サービスの試用段階である「ベータ版」から正式なサービスへと移行したものの、将来にわたってサービスを持続させる収益基盤はまだない。グレイバー氏は「最近まで収益化を考えるフェーズ(段階)にはなかった。今年は考えていきたい」と率直に語った。

photo 一般参加者からの質問に答えるジェロミー・ジョンソン氏

 Xなど多くのSNSは広告収入を経営の柱としているが、ジョンソン氏は「安易に広告を導入することは考えていない」と説明する。一部のサービスに課金する案などもあり、ビジネスモデルの確立が求められている。

 またブルースカイでは、ユーザー同士のダイレクトメッセージ機能や、フォロワー以外のユーザーに自身の投稿が見られないよう「鍵」をかける機能、動画をアップロードする機能などが導入されていない。来場者からの質問に対し、グレイバー氏とジョンソン氏は、こうした機能の導入も検討していることを明らかにした。

 さらに、SNS内で詐欺的な勧誘などの犯罪行為が行われたり、ユーザー同士の対立や誹謗中傷、名誉棄損などが起きたりするケースが社会問題化している。ジョンソン氏は報道陣からの質問に対し、ブルースカイではユーザーが自身で表示されるコンテンツを統制できる機能(モデレーション)を備えていると指摘。また、ユーザーが運営するコミュニティーではそれぞれ独自にルールを決められることを挙げ、利用者自身で健全な利用空間を保っていくことを期待した。

 14日午後には、大阪でも「Bluesky Meetup in Osaka」が開催される。(上野嘉之、西山諒)

photo 「Bluesky Meetup in Tokyo」が開かれた会場(東京・紀尾井町のLINEヤフー本社)
photo オンラインで参加した米ブルースカイ社のジェイ・グレイバーCEO(画面)と、同社開発者のジョンソン氏(右)
photo イベント後の懇親会では、米ブルースカイ社の開発者ジョンソン氏を囲んで交流の場がもたれた
photo 米Bluesky本社の方々に届けるメッセージの寄せ書きも行われた

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