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「正しい抱っこ紐の使い方」とは 小児整形外科医が教える子供の発達を守るコツ

 更新日:2024/04/12
「正しい抱っこ紐の使い方」とは 小児整形外科医が教える子供の発達を守るコツ

近年さまざまな商品が出てきており、ますます機能的になってきている「抱っこ紐」。両手がふさがっている場合や、長時間の抱っこの際にとても便利に使える反面、使い方を間違えると事故の原因になったり、子どもの発達に影響を与えたりすることもあります。そこで今回は、「正しい抱っこ紐の使い方」について、運動発達という観点から小児整形外科医の中川先生に解説していただきました。

中川 将吾

監修医師
中川 将吾(つくば公園前ファミリークリニック)

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2009年筑波大学医学専門学群医学類卒業後、小児整形外科を専門とし、筑波大学附属病院、滋賀県立小児保健医療センター整形外科、茨城県立医療大学付属病院整形外科などで勤務し、様々な経験を積む。2022年にはつくば公園前ファミリークリニックを開設し、地域に誇れるクリニックを目指し診療に励んでいる。

抱っこ紐を選ぶ際の基準は?

抱っこ紐を選ぶ際の基準は?

編集部編集部

抱っこ紐にはさまざまな種類がありますが、どのように使い分けるのがいいのでしょうか?

中川 将吾先生中川先生

赤ちゃんの月齢によって最適な抱っこ紐は変わってくると考えられます。その理由は運動機能の発達レベルに関係してくるからです。それぞれの抱っこ紐の特徴を捉えて使い分けることで、安全で赤ちゃんにとっても正しい使い方になると思います。

編集部編集部

新生児期の抱っこ紐はどのように選べばいいのですか?

中川 将吾先生中川先生

新生児期から抱っこ紐を使うことは、運動発達の観点から積極的にはすすめられません。新生児期はまだ体がやわらかく体重も軽いので、優しく手で抱っこしてあげることが理想的です。新生児から使用可能と書かれている抱っこ紐であったとしても、縦抱きで赤ちゃんの首や背骨を固定することは困難であると考えられます。手でのサポートができない場合は、スリングタイプを使用したり、ベビーカーの使用を検討したりしましょう。

編集部編集部

では、縦抱きの抱っこ紐はいつから使用できますか?

中川 将吾先生中川先生

基本的には首が据わっていれば、一時的な使用については問題ありません。ただし、1人座りができていない赤ちゃんの場合、抱っこ紐の中で背骨をまっすぐに保つことが難しく、くしゃっと折れ曲がって動けなくなってしまっている可能性があります。そのため、抱っこ紐の中に入れたまま長時間の抱っこをおこなう際、背骨の動き方や骨盤の傾きが一方向に固定されてしまう危険性があります。動きの自由度を持たせるという意味では、やはり1人で座って自由に体を動かせるまでは、抱っこ紐を使用していたとしてもお尻や背中を手で支えてあげる方が好ましいと思います。

抱っこ紐の注意点を解説 スリングタイプ・キャリータイプの違いとは

抱っこ紐の注意点を解説 スリングタイプ・キャリータイプの違いとは

編集部編集部

抱っこ紐は大きく分けてスリングタイプとキャリータイプがあると思いますが、それぞれの注意点を教えてください。

中川 将吾先生中川先生

わかりました。はじめにスリングタイプの注意点から話していきますね。スリングタイプの抱っこ紐を使用する際は以下の点に注意してください。
落下に気をつけること。スリングタイプは赤ちゃんを固定するためのベルトがついていないものがほとんど
窒息しないように顔の位置を確認すること。深く入り過ぎると顔の前を覆ってしまう
脚をまっすぐのまま固定しないこと

自由な動きができると股関節の成長に対しての心配はなくなります。

編集部編集部

キャリータイプの場合はどうでしょう?

中川 将吾先生中川先生

赤ちゃんの側の注意点については上に述べた様に、縦抱きの抱っこ紐の注意点と同じです。どちらかと言うと、このタイプの抱っこ紐は使用する方に対して注意が必要です。ベルトやバンドが緩く赤ちゃんを低く抱きすぎると、重さがベルトを通して腰に集中してしまいます。反り腰の原因になってしまったり、体を痛めたりすることになってしまいます。なるべく体に寄せて、赤ちゃんのおでこにキスができるくらい上げて抱っこするようにしましょう。

編集部編集部

抱っこ紐を使用することで運動発達にどのような影響が考えられますか?

中川 将吾先生中川先生

抱っこ紐を使用することで、赤ちゃんの動きが制限されてしまったり、動き方に制限を与えてしまっていたりする可能性があります。抱っこしているときの赤ちゃんは音や光に反応して振り返ったり、バランスを崩してしがみついてみたりと、新しい動きを身につけるタイミングでもあります。がんじがらめにしてしまうと、それらの機会を奪ってしまうことになります。抱っこ紐の使用は必要最小限が望ましいでしょう。

抱っこ紐と股関節脱臼の関係

抱っこ紐と股関節脱臼の関係

編集部編集部

抱っこ紐で股関節脱臼をすると聞いたのですが本当でしょうか?

中川 将吾先生中川先生

実は、抱っこ紐で股関節脱臼を引き起こすという明確なエビデンスはありません。過去の子育て方法などから、脚を伸ばしたまま固定すると股関節脱臼しやすいということは明らかですが、実際に使ってみると抱っこ紐に入っている状態でその肢位をとることがほとんどないことがわかると思います。最近ではその注意がおかしいと指摘されることもありますが、まだまだ昔の常識が変わっていないのかも知れません。むしろ、近年では「抱っこ紐は赤ちゃんの股関節発達にいい」という説もあります。

編集部編集部

詳しく教えてください。

中川 将吾先生中川先生

脚を広げた縦抱きの姿勢で、M字抱っこやコアラ抱っこと呼ばれる姿勢が股関節に良いとされています。しかし、上で述べた様に、生後5〜6ヵ月頃までは背骨の安定性がまだ得られないため、お尻や背中を手で支えてあげるようにしてください。

編集部編集部

まとめとして、抱っこ紐を使用することは赤ちゃんにとって良いことなのでしょうか?

中川 将吾先生中川先生

これも明確なエビデンスがあるわけではありませんが、個人的には抱っこを安定して続けることよりも、疲れて休んだり持ち直したり、ほかの人に変わったりしながら、その際に赤ちゃんが体勢を変えることが刺激になり、運動発達に良い影響を与えるのではないかと考えています。その中で脚を自然と動かす様になり、股関節脱臼の発生を抑えることになるのかは今後の研究が期待されます。

編集部まとめ

抱っこ紐の使い方については股関節脱臼への影響も含めてさまざまな意見が取り沙汰されています。便利な道具はその反面、動くという本来当たり前に備わっている人間の基本的な能力に影響を与えてしまいます。それぞれの特徴を知り、適度に使用しながら、赤ちゃんと共に成長していけると良いですね。

医院情報

つくば公園前ファミリークリニック

つくば公園前ファミリークリニック
所在地 〒300-2654 茨城県つくば市水堀485-1
アクセス つくばエクスプレス 「万博記念公園駅」下車 車5分
診療科目 小児整形外科、リハビリテーション科

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