太宰のイメージではないけれど…「津軽」が専門家イチオシの理由

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
高校時代から太宰治を愛読する大橋毅彦さん=兵庫県西宮市の関西学院大で2023年12月21日午後4時24分、三角真理撮影
高校時代から太宰治を愛読する大橋毅彦さん=兵庫県西宮市の関西学院大で2023年12月21日午後4時24分、三角真理撮影

 今も多くの読書ファンの心をとりこにする太宰治。好みの作品は人それぞれだろうが、愛読者の一人、関西学院大文学部教授の大橋毅彦さん(68)が薦めるのは「津軽」。その魅力は。【三角真理】

カッコイイの対極にある純真さ

 「津軽」は太宰自身である「私」が故郷の津軽半島を3週間ほど旅し、そこで出会う懐かしい人たちとの交流を描く。

 「登場する人たちが生き生きと描かれ、さらにその人たちと『私』のコミュニケーションが、いいなあと思わせるんです」

 太宰の作品は「暗くて陰うつ」と思われがちだが「『津軽』はそのイメージから外れた作品」と大橋さんが強調する。

 たとえば、「私」が津軽半島の東海岸・蟹田を訪ねる場面。迎えたSさんの供応ぶりがこの上なくにぎやか。妻に「東京から太宰が来た!」というように声を上げ、矢継ぎ早にもてなしの指示を出す。「ここ、朗読しちゃいますよ」と大橋さんが文庫本片手に朗々と読み始めた。

 「待て!……待て!……」。うれしくて言葉が空回りする。演劇の台本みたいな部分だ。

 ユーモアがあって、ちょっと笑えるが、それだけではない。「このくらい夢中になって…

この記事は有料記事です。

残り1772文字(全文2248文字)

あわせて読みたい

この記事の筆者

アクセスランキング

現在
昨日
SNS

スポニチのアクセスランキング

現在
昨日
1カ月