昨年王者の筑波大が、関東学院大との開幕戦に3-0で快勝し、今季から指揮を執る戸田伊吹ヘッドコーチ(4年/柏U-18)の初陣を飾った。戸田ヘッドは「まずはホッとしているというのが一番の感想です」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。

指導者養成も重視する筑波大らしい取り組みだ。小井土正亮監督がいながら、ヘッドコーチが日々の練習をオーガナイズし、試合で指揮を執る。昨季、チームでその役割を担った平山相太氏(現仙台大監督)が大学院を修了したため、今季は戸田がヘッドコーチに就任した。柏のアカデミー出身で、選手として関東リーグに出た経験もあったが、現役を退く決断をして指導者の道を志した。

「選手としての限界を感じたのが1つと、もともと指導者に興味があった中で指導者の勉強をしながらサッカーを続けるという意味で筑波に入ってきて、小井土(正亮監督)さん含めて、本当に優秀なというかすてきな指導者の方が多いので、そういった方々との日々を通じてこっちで勝負したい思いが強くなった」

同じ学生、特に4年生は同期ながら選手とコーチという関係に。「同期にはいろいろやりづらさは感じさせてしまっている部分はある」としながら「いいやつらなので、彼らに支えられているなと日々感じていますね」と感謝した。実際、この日はスタメンに6人の最高学年が並んだ。小井土正亮監督は「戸田を男にしようということで、同期としてピッチの中からも感じられましたし、終わった後、帰ってくる時もまずは息吹のところに行く。そういう新しい筑波のやり方の中で気持ちとプレー面もそろった充実した形で迎えられたかな」と今季の体制に手応えを示した。

スタッフの体制とともに、選手が毎年入れ替わるのも学生スポーツの特徴だ。昨季強烈なキャプテンシーでチームをまとめたMF山内翔(22=現ヴィッセル神戸)が抜け、福井啓太(4年/大宮U18)が主将に就任した。同い年のヘッドコーチは「啓太はプレーでけん引していくタイプなので、彼をキャプテンに据えたときもみんなで彼に足りないところを補い合って、全員がキャプテンのつもりでやっていこうという話はしていた」。誰かに頼るのではなく、「全員がチームの主役」というチーム作りを意識しているという。

名門筑波で指揮を執るプレッシャーは感じている。ただそれよりも日々の楽しさが勝っている。連覇がかかるリーグ戦、総理大臣杯、昨季4強で散った全日本大学選手権、全てのタイトルを狙いに行く。「このチームが勝つために、同期と最後笑顔で終われるように自分が持っているものを全てこのチームのために費やしたい。やりきって終わりたいと思います」。そう力強く誓った。【佐藤成】