- ポスト
- みんなのポストを見る
- シェア
- ブックマーク
- 保存
- メール
- リンク
- 印刷
誰かが誰かを気に掛け、世話する「ケア」。ケアを中心に据えると社会や人生はもっと豊かになると提唱する学者がいる。寸暇を惜しんで本を読み、論文を書きまくる「モーレツ」研究者だったが、42歳で父親になったことが転機となったという。そんな学者のケア論を聞きに、研究室を訪ねた。
「ワーカホリック」で働き続け
福祉社会学を専門とする兵庫県立大環境人間学部准教授の竹端寛さん(49)。「このゼミでは先生が一緒にモヤモヤを考えてくれます」。ドアの横には、学生お手製のゼミ紹介ポスターが張られ、中から和気あいあいとした話し声が漏れてくる。ソフトな印象の竹端さんだが、話を聞くと、子どもが生まれるまでは徹底的に「無駄」を排除し、成果を出そうとワーカホリック(仕事依存症)のように働き続けてきたという。
竹端さんは博士号を取得後、2年間、苦労してようやく常勤の研究職につくことができた。研究の世界では「パブリッシュ・オア・ペリッシュ」(発表するか、消えうせるか)という言葉がある。竹端さんは職を失いたくないとの思いから、論文をより多く書くことに心血を注いだ。移動時間には情報検索術や仕事を早くこなすノウハウが書かれた本も100冊は読んだ。「効率よく、たくさん生産せなあかんと思い込んでいた」と振り返る。出張も頻繁にこなし、スケジュールをぱんぱんに詰め込んでいた。
「労働」以外を見えないものに
ところが、長くつらい不妊治療を経て、42歳で長女(7)を授かると、その調子では立ち行かなくなった。洗濯機を1日に4回まわし、妻の母乳の出が良くなるように…
この記事は有料記事です。
残り1466文字(全文2128文字)