「さびしくなるね」 無人駅を支えたボランティア、28年の活動に幕

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馬来田駅を守る宮沢久雄部会長(左から2人目)とメンバー。左端は井上友和・久留里駅長=千葉県木更津市で24年3月27日、浅見茂晴撮影 拡大
馬来田駅を守る宮沢久雄部会長(左から2人目)とメンバー。左端は井上友和・久留里駅長=千葉県木更津市で24年3月27日、浅見茂晴撮影

 JR久留里線・馬来田(まくた)駅(千葉県木更津市真理)でボランティアとして乗車券の販売などを担ってきた富来田(ふくた)地区まちづくり協議会の「JR馬来田駅ボランティア部会」が、31日に活動を終える。メンバーの高齢化が理由だが、平成と令和にわたる28年8カ月の活動を惜しんで鉄道ファンが訪れたり、地元の駅利用者から「さびしくなるね」「ご苦労様」との声が寄せられたりしている。【浅見茂晴】

 同駅は1995年に無人化された。周辺が若者のたまり場となってごみが散乱したり、自転車が乗り捨てられたりしたため、同年、JRはボランティアグループとの間では珍しい簡易委託契約を、富来田地区対策振興協議会(当時)と締結。乗車券・定期券の販売や駅構内・トイレの清掃、ホームのブルーベリーの剪定(せんてい)や花壇への植え付けなど、維持管理に乗り出した。

 現在、メンバーは男性10人と女性3人。会社員や公務員のOB、主婦らが2~3人1組で、水・日祝日を除く午前7時45分~同11時45分に業務を行う。メンバー1人当たり月3、4回で分担する。

 また、近くの富来田中学校の生徒が清掃に訪れたり、富来田小児童の「まち探検」授業に応対したりもしてきた。駅利用者らとあいさつを交わすうちに顔見知りとなり、コミュニケーションの場にもなっている。

 最大の危機は、2019年の台風15号だった。駅舎の瓦が飛ばされるなど大きな被害が出たが、なんとか乗り越えた。JRのOBで部会長の宮沢久雄さん(73)によると、最盛期にボランティアは23人を数えたが、現在は13人。80代が4人で、平均年齢は75歳。乗車券などの販売では、行き先として四国や関西の知らない駅名を告げられて「ハラハラ」したり、1日の終わりに運賃の精算をする際に計算が合うかどうか「ドキドキ」したりしたが、助け合って業務を続けてきた。しかし「金銭管理に不安を感じ、お客様やJRに迷惑を掛けたくない。年には勝てなかった」といい、昨秋、メンバーで話し合って決断したという。

 メンバーは「(活動は)楽しかった」「多くの知り合いができた」と振り返る。久留里線は木更津市中心部へ向かう唯一の公共交通機関で、地区の表玄関でもある駅を守っていこうと、ブルーベリーや花壇の手入れは引き続き、担当する。宮沢部会長は「クラシックな駅舎を残してほしい」と願う。

 今月に入り、多くの鉄道ファンが別れを惜しみ、切符を買いに訪れている。最終日の31日は日曜だが、駅の窓口を開けて最後の業務を務める。

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