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「急性リンパ性白血病の症状」はご存知ですか?検査・治療法も解説!【医師監修】

 更新日:2024/03/28
「急性リンパ性白血病の症状」はご存知ですか?検査・治療法も解説!【医師監修】

小児に多く発症する急性リンパ性白血病は血液のがんの一種で、成人ではまれな病気です。

急性リンパ性白血病では正常な血液細胞が作られなくなるため、貧血・出血などさまざまな症状が現れます。

治療しないと進行し生命に関わる可能性があるため、気になる症状があれば早めに検査・治療をすることが重要です。

今回の記事では急性リンパ性白血病の症状・検査・診断・治療法について詳しく解説します。ご自身・ご家族が急性リンパ性白血病の可能性がある場合は、ぜひ参考にしてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

急性リンパ性白血病(ALL)とは?

急性リンパ性白血病とは血液がんの一種で、血液細胞のうち白血球の一種であるリンパ球が作られる途中で細胞ががん化し増殖することで発症します。
発症すると、がん化した細胞である白血病細胞が血液細胞を作る組織である骨髄で増殖するため、造血機能に影響を及ぼし正常な血液細胞が作られなくなります。そのため、血液中の赤血球・白血球・血小板などの血液細胞が減少し、さまざまな症状が現れるのです。

急性リンパ性白血病の症状

急性リンパ性白血病の症状にはどのようなものがあるのでしょうか。急性リンパ性白血病では赤血球・白血球・血小板が減ることでさまざまな症状が現れます。
具体的にどのような症状が現れるのかを詳しく見ていきましょう。

貧血・動悸・息切れ

急性リンパ性白血病では、赤血球が減ることで貧血を引き起こします。貧血とは、赤血球の色素成分であるヘモグロビンの濃度が低下した状態のことです。
ヘモグロビンには全身に酸素を運ぶ作用がありますが、ヘモグロビンが不足すると全身に酸素が十分に行き渡らなくなります。その結果、息切れ・動悸・立ちくらみ・めまいなどの症状が現れます。

鼻血・歯茎からの出血

急性リンパ性白血病を発症すると、鼻血・歯茎からの出血が起こることがあります。なぜなら、白血病細胞により出血を止めるのに必要な血小板が作られなくなるからです。
血小板は血液細胞の一種で、血管壁が損傷した際にその傷口に集まって出血を防ぐ役割を果たします。しかし、血小板が少なくなると止血する作用が弱まり、鼻血・歯茎などから出血するようになるのです。

発熱

急性リンパ性白血病では赤血球・血小板に加え、白血球も減少します。白血球は体内に入ってきた細菌・ウイルスなどの異物と戦い、体を守る血液細胞です。通常は、体に異物が入ると白血球が増え細菌を取り込み無害化します。
しかし、白血球の数が少なくなると、異物が入ってきても体を守れなくなり、発熱の症状が現れるのです。さらに急性リンパ性白血病では、発熱するとなかなか熱が下がりにくい傾向にあります。

肺炎

白血球の減少による影響は発熱だけではなく、肺炎を引き起こす場合もあります。肺炎とは感染症の一種で、細菌・ウイルスの感染により炎症が起こる病気です。
肺炎になると、発熱・咳・たん・呼吸困難などの症状が現れます。肺炎の症状は風邪の症状と似ているため、発症しても自分で気づかない可能性があるため注意が必要です。

倦怠感

急性リンパ性白血病ではだるさを感じる・力が入らないといった倦怠感を覚えて、普段の生活を過ごしにくくなります。また、倦怠感は貧血・がんの治療などによって現れる場合があります。

臓器に浸潤している場合:関節痛・リンパ節の腫れ

白血病細胞は血液中に存在するため、体内に広がります。白血病細胞が臓器に浸潤している場合は、関節に痛みが生じたり、免疫機能に欠かせない器官であるリンパ節の腫れが生じたりすることがあります。なお、浸潤とは白血病細胞などのがん細胞が周囲の組織に滲みこむように広がることです。
さらに、肝臓・脾臓でも増殖を起こすようになり、肝臓・脾臓が腫れることで痛みを感じたり膨満感を覚えたりする場合もあります。

中枢神経に浸潤している場合:頭痛・吐き気・手足のまひ

白血病細胞は中枢神経に浸潤しやすく、頭痛・吐き気・手足のまひが起こる可能性があります。中枢神経とは神経細胞が多く集まっている部分で、脳・骨髄のことです。
骨髄に白血病細胞が増殖することで、骨髄機能が低下し手足のまひなどが現れます。

急性リンパ性白血病の検査・診断

急性リンパ性白血病が疑われる場合は、どのような検査が行われるのでしょうか。急性リンパ性白血病では血液細胞が減少するため、診断時には血液検査が行われます。しかし、血液検査のみでは診断できないため、骨髄検査も行います。
ここからは、急性リンパ性白血病の検査・診断について詳しく解説しましょう。

血液検査

血液検査は、血液を採取して血液中に含まれる成分の数値を調べる検査です。一般的に急性リンパ性白血病を発症している場合は、赤血球・血小板が減少していることが多いようです。
また、白血球は異常に多いこともあれば、異常に少ないこともあります。

骨髄検査

血液検査で急性リンパ性白血病が強く疑われる場合は、骨髄検査も行います。骨髄検査とは、腰の骨に針を刺して骨髄組織をとる検査です。
骨髄検査には注射器で骨髄液を吸引する「骨髄穿刺」・太い針を刺して骨髄組織の一部をとる「骨髄生検」があります。採取した骨髄組織を顕微鏡で観察して、白血病細胞の有無などを調べます。

急性リンパ性白血病の治療

基本的に急性リンパ性白血病の治療は、薬物療法・造血幹細胞移植を行います。まず、血液検査・骨髄検査で急性リンパ性白血病と診断されたら、染色体検査・表面抗原マーカー検査・遺伝子検査を行い治療法を決めます。
ここからは、急性リンパ性白血病の治療について詳しく見ていきましょう。

薬物療法

薬物療法ではアドリアマイシン・シクロフォスファミド・ステロイド剤といった抗がん剤を複数組み合わせて治療を行います。ただし、フィラデルフィア染色体がある場合は、分子標的薬も使用します。
分子標的薬とは、がん細胞の増殖に関わるたんぱく質・がんを攻撃する免疫に関わるたんぱく質などに直接作用する薬です。急性リンパ性白血病では分子標的薬のうち、イマチニブ・ダサチニブ・ポナチニブというチロシンキナーゼ阻害薬を使用します。
薬物療法では白血病細胞を減らして寛解という白血病細胞のない状態になったら、根治を目指して薬物療法を続けます。ただし、薬物療法を行っている間は感染症のリスクがあるため、手洗い・うがいなどの感染症予防を行うことが重要です。

造血幹細胞移植

薬物療法を行っても、白血病細胞が減らないもしくは寛解となった後に再度白血病細胞が現れた場合に造血幹細胞移植を行います。造血幹細胞移植とは、あらかじめ造血幹細胞を採取し、薬物療法を行った後に採取した造血幹細胞を移植する方法です。
造血幹細胞移植には、患者さん本人の造血幹細胞を採取する自家造血幹細胞移植・臓器を提供するドナーの造血幹細胞を採取する同種造血幹細胞移植があります。急性リンパ性白血病では同種造血幹細胞移植を行うケースが多いとされます。

急性リンパ性白血病の症状についてよくある質問

ここまでは急性リンパ性白血病の症状・検査・治療について解説しました。ここからは「急性リンパ性白血病の症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医が回答します。

急性リンパ性白血病の初期にはどのような症状が出ますか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

急性リンパ性白血病の初期症状は、主に倦怠感・発熱・貧血などの症状です。いずれも風邪に似ている症状であるため、初期の段階で自分で気づくのは難しいと考えられます。そのため、定期的に血液検査を行う・少しでも気になる症状があれば医療機関を受診することが大切です。

あざができやすくなったのですが急性リンパ性白血病の可能性はありますか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

急性リンパ性白血病では血小板の減少により出血傾向となり、あざができやすくなります。そのため、あざができやすくなると急性リンパ性白血病を発症している可能性があるでしょう。通常は打撲などによりあざができることがありますが、急性リンパ性白血病の場合は打撲していなくてもあざができることもあります。また、少しの衝撃を受けたり力んだりするだけでもあざができる場合もあるため、注意が必要です。

編集部まとめ

急性リンパ性白血病は成人ではまれな病気ですが、発症すると急速に進行し生命を脅かすリスクがあるため、注意が必要です。

また、急性リンパ性白血病では、血液細胞が減少することでさまざまな症状が現れます。

赤血球が減少することで貧血症状が現れるほか、血小板が減少することで出血傾向となり、鼻血が出やすくなったりあざができやすくなったりします。

さらに、肺炎・発熱・関節痛なども急性リンパ性白血病の症状です。

急性リンパ性白血病は早期発見が重要とされています。少しでも気になる症状があれば、医療機関を受診することを心掛けましょう。

急性リンパ性白血病と関連する病気

「急性リンパ性白血病」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

一般的に急性の白血病は進行が速く、慢性の白血病は進行が緩やかであるといわれています。白血病の症状は風邪のような症状が多いため、自覚するのが難しいでしょう。そのため、少しでも気になる症状がありましたら、医療機関を受診してください。

急性リンパ性白血病と関連する症状

「急性リンパ性白血病」と関連している、似ている症状は10個ほどあります。
各症状・原因・治療法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

上記の症状は白血病以外の病気が隠れている可能性があります。不安があれば自己判断せずに、医師に相談しましょう。

この記事の監修医師