宝塚劇団員死亡 「改善すべきことは無数に」 遺族側弁護団が苦言
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娘の尊厳を守りたい一心で、今日まできました――。宝塚歌劇団(兵庫県宝塚市)の劇団員の女性(当時25歳)が2023年9月に死亡した問題は、28日に当事者間でパワーハラスメントを認める合意書を締結するなど節目を迎えた。遺族側弁護団は女性の母親のコメントを公表し、歌劇団側のこれまでの姿勢には「反省し改善すべきことは無数にある」と苦言を呈した。
遺族代理人の川人博弁護士は28日、東京都内で記者会見を開いた。川人氏によると、遺族側がパワハラにあたると主張してきた宙組上級生らによる15件の言動はほぼ認められた。川人氏は「遺族側が主張してきたパワハラ行為はおおむね合意書に反映することができた」と明かした。
合意書について「劇団内部の実態を改革し、あしき伝統を見直す第一歩として重要な意義がある。今後、宝塚歌劇団に所属する劇団員の人権や健康を守っていく上で重要な礎となる」と評価した。
パワハラ行為に関わったのは、「厳密に言うと10人以上。少なくとも10人」(川人氏)だという。劇団幹部や宙組上級生、劇団の演出担当者らで、このうち6人による直筆の謝罪文などを受け取った。謝罪文の内容や慰謝料など解決金の金額は明かさなかった。
女性がヘアアイロンで顔にやけどを負った問題については、「宙組上級生が、(女性が)自分でやることを望んでいたにもかかわらずヘアアイロンで(女性の)髪を巻こうとして額に1カ月を超えて痕が残るほどのやけどを負わせた」などと認定された。ヘアアイロンで女性にやけどを負わせた上級生も今後、遺族に謝罪文を提出する予定だという。
遺族側と歌劇団側の交渉は約4カ月に及んだ。歌劇団側は当初、パワハラの事実を認めず、交渉が長引く要因ともなった。川人氏は「(昨年)11月半ばにパワハラがなかったという報告書が出たこと自体がまか不思議だった」と批判。遺族側が粘り強く証拠資料を提出するなどした結果、「年明けからパワハラを認める方向になった」と明かした。
労災申請は予定しておらず、問題は一旦幕引きを迎える。ただ、合意書に反したり、遺族を批判したりすれば、川人氏は「新たな紛争になる」とクギを刺した。
「組織風土を変えなかったのは怠慢」
一方、大阪府豊中市内で阪急阪神ホールディングス(HD)、歌劇団側の会見が開かれた。HDの嶋田泰夫社長は冒頭、角和夫会長、歌劇団の村上浩爾理事長らとともに遺族に面会して謝罪したことを明かし、「温かく全力でサポートされてきたご遺族の心情を思いますと、申し開きがございません」と述べた。
交渉の焦点になった上級生のハラスメントについては「悪意を持ってなされたとは言えない」などと説明。その上で「厳しい叱責に悪意がなかったとしてもハラスメントにあたるという気づきが劇団員になく、我々も教えてこなかった」と、認識不足を認めた。「組織風土を変えてこなかったのは劇団。怠慢のそしりを甘んじて受ける」と、責任は歌劇団にあるとの認識を示した。
弁護士チームによる調査報告書を発表した当初から姿勢を転換した理由については「遺族側が提出した証拠資料の検討や、劇団員らのヒアリングなどを重ねて詳細を確認したため」と説明。交渉の長期化に対して「確認に時間がかかった」と釈明し、遺族と折り合うのが難しかった点については「詳細は差し控えたい」と述べるにとどめた。
また調査報告書を発表した昨年11月の会見では、村上理事長が遺族側に対し「証拠があるなら見せていただきたい」と述べ、遺族側が反発していた。村上理事長はこの日の会見でこの発言について「ご遺族に思いが至らず、非常に恥ずかしい」と言及。「大変失礼なことをしたと深くおわび申し上げたい」と陳謝した。【藤沢美由紀、奥山はるな、水津聡子、小坂剛志】
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