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【闘病】旅行先での不正出血で不安になり、受診したら「子宮頸がん」だった…

 更新日:2024/03/25

「2人に1人ががんになる時代」とも言われていますが、それでもやはり「まさか自分が」と思ってしまう人は少なくないと思います。今回お話を伺った山口さんは、「念のため」に受診したところ「子宮頸がん」であることが発覚したそうです。「嫌な予感」が現実となり告知を受けるまでの経緯や、現在は患者自身が決めなければならないという治療法の選択肢などを伺いました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年2月取材。

山口千恵さん

体験者プロフィール
山口千恵

プロフィールをもっと見る

1965年生まれ。福岡県在住(社会福祉士・介護支援専門員)。2023年11月、子宮頸がんステージIIbの診断を受け、同時化学放射線療法を受ける。現在経過観察中。

鈴木 幸雄

記事監修医師
鈴木 幸雄(産婦人科専門医・婦人科腫瘍専門医)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

「念のため」に受診したら、まさかのがん宣告…

「念のため」に受診したら、まさかのがん宣告...

編集部編集部

最初に不調や違和感があったのはいつでしょうか?

山口千恵さん山口さん

2023年の秋ごろ、親戚と旅行先でシュノーケリングをしたあとに、少量の不正出血がありました。すぐに出血は止まったのですが、念のため自宅近くの産婦人科を受診しました。すると、「すぐに専門病院を受診してください」と言われ、その場で紹介いただいた病院に受診予約をしました。

編集部編集部

受診から、診断に至るまでの経緯を教えてください。

山口千恵さん山口さん

11月初旬に専門医を受診し、血液検査と子宮頸部の細胞診を受けました。翌日、主治医から直接連絡が入り「電話では詳しいことは言えないけれど、これから全身の検査をしていきます」と言われました。「電話では言えないってどういうこと?」と嫌な予感がしたのを覚えています。その1週間後の受診で「子宮頸がん」と診断を受けました。それから、1カ月かけてCT・MRI・胃カメラ・大腸カメラ・PETなどの検査を受けて転移の有無を調べました。

編集部編集部

告知の時の様子を詳しく教えてください。

山口千恵さん山口さん

診察室とは別の個室に呼ばれ、そこで告知されました。主治医の説明が淡々としていたこともあり、私も事実と感情が分離しているような感じで、最初はなんだか人ごとのように受け止めていました。しかし、時間の経過とともに不安が押し寄せてきて、転移がないかの検査結果を聞くまでは生きた心地がしませんでした。私の場合、父親が胃がんで亡くなったこともあって、本当に怖かったです。幸い転移はなく、ひとまずほっとしました。

編集部編集部

どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?

山口千恵さん山口さん

治療方針として「手術(広汎子宮全摘術)」と「抗がん剤と放射線治療の併用」(同時化学放射線療法)の2つの選択肢が提案されました。手術の場合、2週間程度入院した後に追加治療として抗がん剤と放射線治療になります。一方、抗がん剤と放射線治療の併用の場合は1カ月半の入院治療と説明されました。その時の同意書には、副作用や後遺症など怖い文言が並んでいました。副作用の程度には個人差があることや、副作用のほとんどない人もいると説明を受けましたが不安でしたね。

編集部編集部

どのように治療法を決めたのですか?

山口千恵さん山口さん

先生から、この病院ではできないものの保険適用外で「重粒子線治療」という治療法もあると聞きました。通常の放射線治療は子宮の近くにある腸や膀胱なども少なからず影響を受けますが、重粒子線治療はがん細胞にピンポイントで照射するため、ほかの臓器への影響が比較的少ないそうです。高額になるのですが、医療保険・がん保険に加入し先進医療特約をつけていたので「詳しく話を聞きたい」と伝えました。先生も「きちんと説明を受けてあなたが納得した上で治療を受けてもらったほうがいいから」と、重粒子線治療をやっている県外の病院に紹介状を書いてくれました。

「お任せします」ではない、現代のがん治療

「お任せします」ではない、現代のがん治療

編集部編集部

そこからどうされたのですか?

山口千恵さん山口さん

実施している県外の病院へ行き、説明を受けました。重粒子線治療は基本的に腫瘍が6cm以上の場合に適応ですが、私の場合は3.9cmでした。この時先生とたくさん相談し、改めて重粒子線治療ではなく化学放射線療法を受けた方がよいのでは、と助言をいただきました。私自身も、重粒子線治療を選択した場合は県外の病院に毎日通うことになり、体力が持つのかという新たな心配もありました。色々と考えた末、抗がん剤と放射線治療の併用での治療を進めていくことにしました。

編集部編集部

そのときの心境について教えてください。

山口千恵さん山口さん

少ない情報の中で、最終的には自分で治療の選択をしなければならないという不安と恐怖はありました。どの治療を選択するにしても、副作用や後遺症は個人差があるため、やってみなければ効果の有無や副作用はわかりません。ですので、ネットや書籍などからできるだけ情報を集めるようにしました。

編集部編集部

実際の治療はどのように進みましたか?

山口千恵さん山口さん

週1回の抗がん剤(シスプラチン投与)を5回、平日は毎日放射線治療を受け合計29回行いました。シスプラチン投与2日目から吐き気・胃もたれなどの症状がではじめて、1週間後からは下痢もひどくなりました。整腸剤を飲むも全く効果はなく、あまりにひどいと放射線治療に影響するので下痢止めを処方してもらいました。シスプラチン2回目を投与した日の夜中には両下肢のしびれが出ましたが、3時間ほどでおさまりました。さらに、3週間後から週1回、子宮頸部に直接放射線を照射する腔内照射がはじまり、全部で4回受けました。抗がん剤の副作用でひどい貧血となってしまい、放射線の効果が薄れてしまうからと輸血も受けました。

編集部編集部

受診から治療、現在に至るまで、何か印象的なエピソードなどあれば教えてください。

山口千恵さん山口さん

新型コロナウイルス感染による面会制限があり辛かったです。家族と面会はできましたが時間制限があって病棟の入り口でしか会えません。もちろん外出もできないので、入院が長くなれば長くなるほどストレスが溜まり、精神的に辛い時期がありました。

編集部編集部

大変でしたね。

山口千恵さん山口さん

でも辛いことばかりではなかったです。治療で全く食べられなくなり、いつまで続くかわからないひどい下痢で不安になっている時に、看護師の方がベッドサイドでずっと話を聞いて共感してくれたおかげで随分気持ちが楽になりました。放射線科では「好きなミュージシャンは?」と聞かれてドリカムと答えると、その時から毎回ドリカムの曲を流してくれるようになりました。特に腔内照射のときは同じ姿勢で2時間耐えなければならないので、それで気がまぎれて本当に助かりました。これも放射線科のちょっとした心遣いですね。

不安には必ず終わりが来る

不安には必ず終わりが来る

編集部編集部

病気の前後で変化したことを教えてください。

山口千恵さん山口さん

食事ができること、お風呂に入れること、外出できること……なんでもない日常が一番幸せだということに気づきました。また私は、成年後見や死後事務委任の事業所を経営しているのですが、相談者の中にはがんをはじめいろんな病気と向き合っておられる方が数多くいらっしゃいますので、そういう人たちにはこれまで以上に寄り添ったご支援ができるのではと感じています。

編集部編集部

今までを振り返ってみて、後悔していることなどありますか?

山口千恵さん山口さん

子宮頸がんの検診は受けたことがなかったので「受けておけばよかった」と後悔しています。唯一、今回異常を放置せずすぐに受診したことはよかったと思っています。今でも「あのときすぐに産婦人科に行ってなかったらとんでもないことになっていたかも…」と思います。躊躇することが一生の後悔につながると感じました。

編集部編集部

現在の体調や生活はどうですか?

山口千恵さん山口さん

退院時にひどかった食欲不振・胃もたれ・下痢などの症状は10日程度でおさまりました。ただ、入院中ほとんど食事がとれず、胃が小さくなってしまったのか食は細くなりました。再発や転移の不安はありますが、免疫力が一番なので食事にも気をつけるようにしています。加工食品や菓子類は控えて、できるだけ旬のものをバランスよく摂ることを心がけています。あとは水分をよく取るようになりました。入院中は食べないうえに、動けないので体重が9kgも落ちてしまいました。退院後からは、ジムに行って少しずつ体を動かして筋肉をつけています。仕事はストレスにならない程度に復帰しています。

編集部編集部

医療機関や医療従事者に望むことはありますか?

山口千恵さん山口さん

多くの方にお世話になり、感謝しています。もしよければ、治療内容や選択肢、検査データなどの情報はできるだけ詳しく、わかりやすく患者へ提供してほしいです。患者と同じ目線におりていただくことで、はじめて信頼関係が生まれると思います。

編集部編集部

最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

山口千恵さん山口さん

病気になると不安なことがいっぱいあると思います。まず、わからないことや不安なことは遠慮せずに主治医に聞きましょう。一人で抱え込まないで周りの専門職に頼ってください。また、インターネットには多くの情報があふれていますが、正しい情報なのかそうでないのかを見極める目を養うこと、がん保険に加入しておくことをおすすめします。がん保険に加入しておくことで先進医療などの選択肢が広がります。何かあった時、経済的な不安なく治療に専念できる環境作りはとても大切です。そして、今治療を受けておられる方、副作用に苦しんでおられる方、いつ続くかわからない不安に押しつぶされそうな方、必ず終わりはきますので、どうか頑張ってください。

編集部まとめ

大変な治療を乗り越えて「なんでもない日常が一番幸せ」と気づけたという山口さん。担当の医師へ相談しながら治療方針を決定されていくのが印象的でした。この記事をお読みのみなさんも、体の異変や気になることが出てきたらお近くの医療機関に相談するようにしましょう。

この記事の監修医師