近年、演出家、プロデューサーとしても活躍する俳優城田優(38)が、「東京」をイメージした歌とダンスのエンターテインメントショー「TOKYO~the city of music and love~」(5月14日から、東急シアターオーブ)の制作に取り組んでいる。6月にはシンガポールでも公演し、演出家として海外デビューする。「壁が高いほど燃える」と、今を楽しんでいる。【梅田恵子】

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超ネガティブ人間を自称し、俳優業では「死ぬほど緊張する」自分を隠さないが、プロデューサー、演出家としての彼は、驚くほど超ポジティブ人間だ。

「自分が面白いと思うものを、才能豊かな俳優、スタッフに委ねて作るので、緊張がない。失敗したらどうしよう、作品に泥を塗ったらどうしようといういつものマインドがないのが圧倒的な違い」。作っているものには自信があるとし、「有名な演出家が見に来たら『どうぞ楽しんでいってくださーい』みたいな。『僕、演出家としてけっこうイケてますよ』って言っちゃうレベルで楽しい」。

ショーでは、プロデュース、演出のほか、出演もする。テーマは「東京」。「海外で通用する日本発のエンターテインメント」を発信するプロジェクトで、世界のあらゆる文化を受け入れながら進化する都市、東京に焦点を当てた。自らオファーしたシンガー、ダンサーなど14人のアーティストが集結。ミュージカルやディズニーナンバーのほか、J-POP、昭和歌謡などさまざまな音楽を融合し、歌とダンスで東京のエネルギーを表現する。

「東京のど真ん中、渋谷でやるので、まずは日本人に日本の良さ、東京の良さを知ってもらいたい。興味を持ってもらうため、みんなが知っている曲を集めました。歌好き、ダンス好きの人には至福の時間になると思います」。映像やセットも東京を意識している。「東京って何も不足していないけど、どこかさみしさも感じる。僕が歌う予定のレ・ミゼラブルの『オン・マイ・オウン』という曲は、渋谷のスクランブル交差点でポツンと1人で歌っているような映像にしようかと考えています」。

子どもの頃から、おもちゃを使ってストーリーを考えたり、曲を作ったりと、ものづくりが大好き。プロデューサー業、演出業への進出は自然なことだった。ショートフィルム撮影や自身のコンサートの演出も手がけ、16年に演出家デビュー。19年に大型ミュージカル「ファントム」を演出して話題を集めた。

演出家の仕事には「わくわくしかない」。作品の評価がのしかかり、それは自身の評判に直結することにもなるが、「その怖さは主演俳優で慣れているので」。難しさを語るのも楽しそう。「プロデューサーって、クリエーターとビジネスマンの間にいないといけない。演出家が最高のアイデアを出して来た時に、『面白いっすねー』って乗りたいけど、予算見たらちょっと無理とか(笑い)。数字のことがいちばんしんどい」。一方で「壁が高いほど『やってやるよ!』って燃える人間。逆境を好んでやりがち」と大笑いした。

俳優出身者が制作を行う強みは「両面知っていること」という。「お金の話も含めて裏方の苦労も分かるし、俳優の気持ちも分かる。ディスカッション大好きなので、不安を抱えた俳優が夜中に電話してきても全然苦にならない。俳優が求めているものを吸収しつつ、自分が作りたいものを進めていけるのは、僕の強みだと思います」。

俳優、演出、プロデュースと、マルチに活躍する現状を「ラッキー」と感謝しているが、「全然満足していない」。「プロデューサーとして客観的に城田優を見ると、もっとできるのにもったいないなと思う。今回のショーを含め、『城田優はこんなこともできるのか』というものをたくさん見せていきたいです」。

■心守るコツは「人生ゲーム」

「超ネガティブ」な自分を自覚し、悩みながらキャリアを積み上げてきた城田だが、演出、プロデュース業に進出したことで、「自分を俯瞰(ふかん)して見られるようになった」と変化を語る。心を守るマインド作りのコツは、降りかかった出来事を「人生ゲーム」でとらえることという。

「悪いことが起こった時に、自分がそのど真ん中にいると思ってしまうと心が死んで、命がいくつあっても足りない。でも、人生ゲームだと思えば、『借金を抱えた』とか『離婚した』とかに止まっても、うわー最悪って思うだけで、泣くほど悲しくはなりませんよね。その発想で生きられれば、心は守れる」。

「昔はもっとピュアで、間違ったことは正してやろうと思っていたんだけど」と嘆きながらも、「経験を重ねて、生き方を変えようと」ときっぱり。「この取材もゲームなんです。日刊スポーツさんに、自分が関わっている舞台を宣伝してもらうというゲーム(笑い)。だから、ビッグマウスでいろいろしゃべっちゃってます」。

■シンガポール公演「全力尽くす」

プロジェクトが海を渡り、6月22日にシンガポールで公演されることも大きな話題だ。会場となる「エスプラネード・シアターズ・オン・ザ・ベイ」は、同国最高の芸術センターとして知られる。シンガポール初進出となる城田は「めちゃくちゃ不安ですけど、海外で公演することを前提にプロデュースした作品なので、全力を尽くしたい。海外で日本語で歌うのも楽しそうだし、東京の魅力をしっかり発信したいです」と意気込んでいる。

◆城田優(しろた・ゆう)1985年(昭60)12月26日、東京都生まれ。日本人の父、スペイン人の母を持ち、7歳までスペインで過ごす。03年に俳優デビューし、08年TBS「ROOKIES」の新庄役、09年にNHK大河ドラマ「天地人」の真田幸村役など。ミュージカルでもブレークし、10年「エリザベート」で芸術祭新人賞など受賞歴多数。19年、ミュージカル「ファントム」演出。190センチ、血液型O。

◆「TOKYO~the city of music and love~」 城田優と、テーマパーククリエーター金谷かほりが共同演出するエンターテインメントショー。出演は城田優のほか、シンガーのSWEEP、RIOSKE(ペルピンズ)、吉田広大、Rainy。、yuzuに加え、ダンサーの原田薫、大村俊介[SHUN]、碓井菜央、BOXER、高村月、日替わりのスペシャルゲストとして、miwa、鷲尾伶菜、島津亜矢が出演する。5月14日~同19日、東京・渋谷の東急シアターオーブで。