TBS系「不適切にもほどがある!」(金曜午後10時)で、令和から昭和にタイムスリップした中学生・向坂キヨシを演じる坂元愛登(まなと、15)が注目を浴びている。

阿部サダヲ(53)演じる昭和のダメおやじや、キヨシの母親役を演じる吉田羊ら実力派俳優らを前にしても、のまれるどころかピュアで多感な中学生を生き生きと表現。昭和と令和の世代間ギャップを映す今作を通じて感じたこと、役との向き合い方を聞いた。【望月千草】

   ◇   ◇   ◇

1986年(昭61)が舞台。平成生まれの坂元が台本を開くと、見知らぬ単語があちこちで目に入った。「『マブい』とか分からなかったですし『11PM』が本当にあった番組なのかとか。スタッフさんから、深夜のテレビ番組を親が寝た後にカーテンに隠れて観ていたという話を聞いたりして時代背景をつかんでいきました」。時には「ググったり、親に聞いたりもしました」。令和用語を交え、作品へのアプローチを振り返った。

父を失った少年を演じた映画「ある男」で脚光を浴びた。これまでは影のある役を演じることが多く、明るい性格のキヨシは自身にとって挑戦の役。昭和で出会い一目ぼれした小川純子(河合優実)にアタックしたり、年頃らしく「おっぱいが見たいんだ!」と刺激的なせりふもある。坂元自身は劇中とは正反対の「ローテンション」な性格。「コメディーとなると、今までやってきたものが通用しないんじゃないかと思いました。現場の雰囲気が明るくて、そのおかげでギアを上げてやれているのかな」。“キヨシ”でいられる環境、作品チームに感謝する。

昭和の価値観からコンプライアンスで縛られた令和へ問題提起をする作風は、放送のたびに話題になる。15歳の坂元にも発見があった。「昭和は人と人とが深く関わりあっていると思いました」。劇中では、純子の家で、ムッチ先輩(磯村勇斗)らとこたつを囲むシーンがたびたび登場する。「今ってそんなに簡単に家に友達や家族以外の人を入れることは、あんまりないような気もして。そういう風習は残っていて欲しいとも思うんですけど、(現代の)ルールや制限に助けられた方々もいると思うので難しいですね」と受け止める。「プロデューサーさんが伝えたいことは『家族を大切にしましょう』『寛容になりましょう』『失敗を恐れるな』の3つとおっしゃっていたので伝わって欲しいなと思います」。受容することも一考してみることも大切なこと。込められたメッセージを肌で感じながら演じている。

素顔は卒業を間近に控えた中学3年生。街中で声をかけられたことはないが、友人からの反響は大きい。「『次どうなるの』とか聞かれたりすることも多くてうれしいです」。学校では「いつか時代劇とかで所作とか役に立つかなと思って」と茶道部に入部した。部長も務めたが仕事との両立は難しい。「部長なのに1番欠席が多くて、ほとんど副部長の子に任せる形になってしまいました」と学生生活の1ページに苦笑い。あどけない一面ものぞかせた。

これまでのキャリアに「キヨシ」が加わり、ブレークも必至。「好きな系統でもあるシリアスな、空気感が重い作品をやってみたい」と目標を語る。憧れは今作でも共演する磯村。「演技の振り幅がすごい。出演された『正欲』という作品を見て、自分でも言葉にできないんですけど、エンドロールでめちゃくちゃ涙があふれた。こんなにお芝居で心が動かせられるんだなと思いました」。俳優としての理想は、すでに明確に捉えている。

◆坂元愛登(さかもと・まなと)2009年(平21)2月9日生まれ、福岡県出身。18年に芸能界デビュー。22年に映画「ある男」で安藤サクラの息子役にオーディションで抜てきされ、スクリーンデビュー。23年、TBS系「100万回 言えばよかった」で連ドラ初出演。ほか出演作に同年にテレビ朝日系「unknown」、映画は23年の「雑魚どもよ、大志を抱け!」、公開中の「罪と悪」など。

◆「不適切にもほどがある!」 脚本宮藤官九郎氏と磯山晶プロデューサー、主演の阿部サダヲのタッグによる“意識低い系”タイムスリップコメディー。阿部演じる主人公の中学教師・小川市郎はひょんなことで1986年から2024年(令6)の現代へ。昭和のダメおやじの不適切発言が令和の停滞した空気をかき回すが、市郎の極論が、コンプラで縛られた令和の人々に考えるキッカケを与える様子を描く。

現代では不適切とされる表現への注釈テロップの挿入、終盤のミュージカルシーンも話題となり、放送時間にはSNSで「#不適切にもほどがある!」「#ふてほど」など関連ワードがトレンド入り。配信も好調で「U-NEXT Paraviコーナー」では国内ドラマランキング1位を記録。2月にはNetflix「週間TOP10」で、記録更新となる3週連続1位を達成し、同局初の快挙となった。