究極タイパが生んだ「歩く100億円」 輝くルビーと人知れぬ悔恨

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インタビューに答える吉川幸枝さん=名古屋市千種区で2024年3月5日、兵藤公治撮影
インタビューに答える吉川幸枝さん=名古屋市千種区で2024年3月5日、兵藤公治撮影

 想像通り、いや、想像を上回るいでたちで現れてくれた。2000年代初頭に放送されたテレビ番組「マネーの虎」などに出演し、「歩く100億円」と呼ばれた実業家の吉川幸枝さん。88歳の今も、会社を経営し、全国でトークショーをこなす。類いまれな人生の原点は、究極の「タイパ(タイムパフォーマンス)」意識だった。

 ショッキングピンクのスーツにファー、両手の指は真っ赤なルビーやダイヤモンドが光を放つ。どれも博物館でしか目にしたことのない大きさだ。ペンダントの三つのルビーは、それぞれ3万年、2万年、1万年前の石という。

 「時間がたつとルビーはこういうふうに色を変える。私たちも、ちゃんとした年を重ねて変化させようじゃない。ワインもそうだし、古くならないとダメ、というものはいっぱいあるわけ」

 昨年、著書「人生は80歳からがおもしろい」(アスコム)を出版した。90歳はまだ折り返し地点と語り、シニアが心や体の健康をどう保つか、経験に基づくノウハウを紹介している。

 なるほど、とうならされる内容が多い半面、「お金があるから、そんなに前向きになれるんじゃないか」という懐疑の念も抱いた。

 そこでインタビューを申し込むと、周囲を圧倒するパワーの裏には、人知れぬ葛藤があった。

「私は安物じゃない」

 吉川さんは1935年、13人きょうだいの末っ子として生まれた。一番上の兄とは27歳離れていて、12番目の姉とは11歳差だった。

 幼い頃に父が亡くなり、家賃が払えなくなった。母と2人、リヤカーに布団と火鉢、梅干しのつぼを積んで名古屋に向かった。…

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