育成就労の外国人労働者に日本語の壁 地方ほど乏しい教育の場
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政府が15日に閣議決定した技能実習に代わる在留資格「育成就労」によって、未熟練の外国人労働者の受け入れ増加が見込まれる中、「言葉の壁」への対応が課題として浮上している。仕事や生活に必要な日本語を身につけてもらう環境が地方を中心に未整備で、政府や自治体、就労先の対応が問われている。
宮城→秋田 オンライン授業で
3月上旬、宮城県蔵王町に住む日本語教師の吉田環さん(47)は自宅でパソコンに向き合った。画面越しにつながっていたのは、約200キロ離れた秋田県内の工場で働くベトナム人技能実習生たち。吉田さんが主宰する日本語のオンライン授業が始まった。
吉田さんは元々、宮城県内で日本語講座の仕事を受け持っていたが、2021年度から秋田の実習生を対象としたオンライン講座を開くようになった。秋田の冬場は雪で交通の便が悪い上、日本語教師の確保も難しく、人づてで吉田さんに依頼が回ってきた。
この日は、困りごとや職場でのトラブルを想定した会話を練習した。参加者のトゥックさん(30)は「寮で授業を受けられるので助かる」と歓迎する。ただ、講座は最初の2年は自治体の予算がついたものの、その後はボランティアでの運営で、吉田さんは「地方ほど教える人材が確保できない」と危機感を募らせる。
文化庁が公表した22年度の日本語教育実態調査の報告書によると、外国人のための日本語教室がない「空白地域」は、全1896市区町村(行政区を含む)のうち、4割超の約830市区町村。全国の日本語教師4万4030人のうち約3割が東京に集中し、全体の半数に当たる2万1568人がボランティアだ。
育成就労 日本語能力が条件に
現行の技能実習では、実習に際して日本語能力試験や資格取得の要件はない。22年は実習生9006人が実習先から失踪しているが、意思疎通ができないことが原因だったケースも含まれるとみられる。
このため育成就労と、即戦力の能力…
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