17、19年の賞金女王鈴木愛(29=セールスフォース)が、完全優勝でツアー通算19勝目を挙げた。

4バーディー2ボギーの70で回り、通算16アンダー272。2位に6打差をつけ、昨年8月以来7カ月ぶり、今季初V。1度はゴルフを辞めようと考えたが、世話になった人を思い「30代ももっと活躍できるところを」と宣言。女王奪還と永久シード(通算30勝以上)に狙いを定める。2位に小祝さくら(25=ニトリ)藤田かれん(23=ライク)高橋彩華(25=東芝)。2年連続年間女王の山下美夢有(22=加賀電子)は15位だった。

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感謝の思いをゴルフにのせた。鈴木は1番をバーディー発進も、2、3番と連続ボギー。2位小祝との差は2打縮まった。だが、心が切れる事はなかった。9番でティーショットを左に外すピンチも、5メートルのパーパットを沈め、ガッツポーズ。最終18番もバーディーフィニッシュ。握りしめたパターを高く掲げた。

初日から首位を守る完全優勝で、昨年8月の北海道meijiカップ以来の頂点。4日間競技では初の完全Vとなった。

2度の賞金女王も近年は苦しんだ。調子を落とし、どうやったらうまくなれるかイメージできず、モチベーションを落とした。

「21年が終わった時点で本当は辞めたかった。身近な人にも話していた」

引退を決意していた。

それでも、周りから「辞めないでほしい」と言われ、気持ちが変化。プレーするのは自分自身だ。「好きなようにやらせて」と周囲に頼み、向き合った。南秀樹コーチから「もう1度上や、永久シードを目指してやろう」と言われ、モチベーションも回復した。

もともと、ゴルフはやりたくて始めたわけではなかったが、家族には「両親は決して裕福ではないけど、私や弟、妹にゴルフをさせてくれた」と感謝する。

「自分がプロになれる自信はなかった。練習場に行って、たくさんの人に助けられてる。いろんな人に少しでも恩返しできたらと思う。やってくれる事には自分もしっかり答えたい。少しでも困っている人がいれば(手助けを)したい」

元日に起きた能登半島地震でも考えさせられた。

「人生を考えた時、プライベートもゴルフでも、そこまで思い切り楽しめていなかった。いつ自分の人生が終わっても後悔しないようにやりたい、と。トレーニングや練習にもしっかり取り組みたいと思った」

被災地へ義援金1000万円を送り、練習や嫌いだった体幹トレーニングにも力が入った。目指すは19年以来の年間女王とツアー30勝以上に与えられる永久シード。「まだまだ上でいたい。若い子には『まだ負けねぇぞ』って気持ちでやってます」。5月に30歳を迎える鈴木が“円熟の30代”へ向かう。【阪口孝志】

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