経営者としてサロンを競争力のある存在に保つためには、標準的なサービス提供にとどまってはいけません。差別化されたコンセプトを明確に打ち出し、本物の顧客体験を提供し、効果的なマネジメントツールを活用し、戦略的にコミュニケーションを取ることが求められます。
美容サロン経営の核となるコンセプト再設計
サロンを開業した当初、あなたは顧客に対して脱毛、ネイルケア、フェイシャルやボディケアといったサービスを提供していたはずです。化粧品ブランドも、いくつかの理由から選定し、すべてが順調に進んでいました。
しかし、振り返ってみると、自身のビジネスを立ち上げた根本的な理由や、競合他社との差別化要素、あるいは顧客にどのような付加価値を提供できるのかについて、深く考えたことはありましたか。
「なぜ」を明確にすること
私は「Perfect’Pro」サブスクリプションの会員によくこう伝えています。
「自分がどこへ向かうのかを知るためには、まず自分がどこから来たのかを知る必要があります」。
この言葉の通り、「なぜ私はこのビジネスを始めたいのか」「なぜこの方向性を選びたいのか」という問いを自分に投げかけることが非常に重要です。この「なぜ(Pourquoi)」を明確にすることで、短期・中期・長期の目標を設定でき、目指す方向とそこへ到達するための道筋が見えるようになります。
「なぜ」を定義しないとどうなるか
もし明確なコンセプトを持たないまま進めてしまうと、競合の中に埋もれ、固定客を失うという不安定な状況に陥る可能性があります。「なぜ」という軸は、日々の業務に意味を与えるものであり、困難な時期にも勇気と意志を保ち、事業の方向性を見失わないための支えとなります。
自分の得意分野を知る
毎朝なぜ自分が働くのかを明確に理解できていれば、自分を本当に動かしている情熱の源も見えてきます。そうすることで、自分の「得意分野」を特定でき、自分が最も力を発揮できる領域を知ることができます。この得意分野こそが、あなたの提供するサービスの軸となり、顧客から「この分野ならあなたに任せたい」と信頼される存在になるのです。例えば、マッサージ、フェイシャルケア、ネイルケア、あるいは経営マネジメントなどが挙げられます。
そして、チームを持つ場合には、自身が経営の舵取りに専念するという選択肢もあります。自分の得意分野を定めたら、それを事業の主要な売上源に育てるために、必要なリソースを集中させることが大切です。
継続的な学びの重要性
ひとつ確かなことは、学生時代に学んだ知識だけでは十分ではないということです。美容の専門教育は、業界で働き始めるための基礎を身につけるよう設計されていますが、あくまで土台にすぎません。そのため、継続的な学びを通じて基礎知識を更新し、専門分野をより深めることが不可欠です。
学びは「支出」ではなく「投資」
私たちは幸運にも、フランスでは職業訓練のための資金をキャリアを通じて積み立てる制度があります。多くの研修はOPCO(フランスの職業能力開発支援機関)やFAFCEA(フランスの職業訓練保険基金)によって費用が支援されますが、中には自己負担が必要なものもあります。
しかし、それを理由に学ぶ意欲を失ってはいけません。学びを「費用」としてではなく「投資」として捉えることが大切です。自分自身に投資することで、顧客により良いサービスを提供でき、その結果として顧客は信頼と継続利用という形で応えてくれます。
覚えておきたいポイント
競争が激化する中で、経営者としての行動には今まで以上に慎重な思考が求められます。提供するサービスの種類をむやみに増やすことは、大きな過ちとなり、結果的に高い代償を払うことになりかねません。
そのため、自身のコンセプトを明確に定義し、自分が何に情熱を感じ、どの分野で心からやりがいを持てるのかを深く考えることが大切です。そして、その分野で卓越するための手段を自ら整えていく必要があります。そうすることで、自身の仕事に確かな意味が生まれ、何よりも顧客からの信頼と継続的な支持を得ることができます。
GoogleビジネスプロフィールとSEOで集客力強化
顧客があなたのサロンを訪れる理由はさまざまです。 立地の便利さ、専門分野の強み、サロンの雰囲気、使用している製品の品質などが挙げられます。
しかし、これらの要素だけでは、もはや他店との差別化や事業の持続的な成功を保証することはできません。顧客が真に求めているのは、他では得られない“特別な体験”です。この「体験」こそが、顧客が他のサロンではなく、あなたのサロンを選ぶ決め手となるのです。
「おもてなし」は入口だけで完結しません
顧客を惹きつけるためには、今やデジタル上での存在感が欠かせません。 あなたのウェブサイトは、サロンの“第一のショーウィンドウ”であり、ブランドイメージを的確に反映する必要があります。
施術メニューは顧客が自分自身をその体験の中に想像できるように魅力的に紹介し、写真は高品質なものを用いることが重要です。ただし、それだけでは十分ではありません。より多くの人々にウェブサイトを見つけてもらうためには、検索エンジンで適切に表示されるよう最適化(SEO対策)を行うことが欠かせません。
可視性を高めるには、Googleが最良のパートナーです
自分のサロンの Google マイビジネス 情報を正確に登録しましょう。必須項目のほかにも、提供しているメニューや現在実施中のキャンペーンを掲載することで、活動的で信頼感のある印象を与えることができます。
また、オンライン予約は今や欠かせないツールです。営業時間外でも予約を受け付けられるため、夜間に時間の取れる顧客にとって非常に便利です。多くの顧客は仕事を終えた夜に、自宅でリラックスしながら予約をすることを好みます。
一方で、電話も依然として重要なツールです。問い合わせがあった場合は、必ず折り返し連絡をすることを忘れないようにしましょう。
美容サロンの顧客体験を高める5つのフェーズ
顧客体験の流れは、サロンを見つけるところから自宅に帰るまで、5つのフェーズで構成されています。
フェーズ1:サロンを知り、予約をする
あなたのウェブサイトは、サロンの世界観を伝えるものであるべきです。提供するサービスは、顧客がその体験を想像できるように魅力的な言葉で表現し、写真の力も活用しましょう。
施術中の様子、サロンの雰囲気、使用する製品などの写真を定期的に発信することで、信頼と関心を高められます。検索結果での表示順位を上げるためには、あなたの専門分野に合わせた適切なキーワード選定が重要です。可能であれば、SEOの専門家とともに最適化を進めましょう。
この段階は、顧客にとっての「第一印象」を決める非常に重要なステップです。最初の印象は二度とやり直せないものです。さらに、オンライン予約システムは顧客にとって決定的な要素となります。多くの人が夜に予定を立てるため、その時間に簡単に予約できることは大きな強みです。
フェーズ2:来店時の対応
このフェーズは軽視されがちですが、実は非常に大切です。来店時の最初の対応こそが、顧客があなたと直接接する最初の瞬間です。
残念ながら、笑顔もなく「こんにちは」とだけ言って対応するサロンも少なくありません。しかし、もし「こんにちは、ようこそ Perfectis Beauté へ」と笑顔で迎えられたら、受ける印象はまったく違います。顧客は歓迎され、特別に扱われていると感じます。
また、常連の顧客には名前や下の名前で呼びかけることで、さらに親近感と特別感を与えることができます。
施術室まで同行し、案内を丁寧に行うことも忘れないようにしましょう。たとえ常連客であっても、これが“おもてなし”の一部となり、特別な体験へとつながります。
フェーズ3:施術の実施
顧客を施術室に案内した後も、丁寧な対応が続きます。施術内容を再確認し、準備の仕方を説明することが大切です。
特に初めてサロンを訪れる人は慣れていない場合が多く、予想外の行動を取ることもあります(実際、使い捨てショーツを頭にかぶってしまったり、パレオを腰に巻くなどの事例もあります)。こうした誤解を避けるためにも、事前の説明が欠かせません。
フェーズ4:施術後の対応と見送り
施術が終わっても、顧客との関係は終わりではありません。あなたの役割は「施術者」であると同時に「アドバイザー」です。施術後には、使用すべき製品や次回おすすめのメニュー、ホームケアのアドバイスを伝えましょう。これらはカウンセリングルームでも受付でも構いません。そして、見送りの際には必ず顧客を玄関までお送りし、ドアを開けてお別れしましょう。この小さな心遣いが、顧客に対する尊重と誠意を伝えます。
フェーズ5:施術後のフォロー
忘れられがちなこのステップは、実は大きな可能性を秘めています。
顧客が自宅に戻っても、あなたのサービスは続いています。施術時に渡したサンプルが製品の品質を伝え、後日購入へとつながることもあります。さらに、アドバイスやホームケアの提案は、施術の満足感を長く維持し、あなたへの信頼を深める要素になります。
また、新規顧客に満足度アンケートを送信したり、Googleレビューへの投稿をお願いすることも効果的です。これにより認知度と信頼性が高まり、新たな顧客を惹きつけることができます。
美容サロンの顧客体験を標準化する運営ポイント
顧客体験の充実は、すべてのサロンにとって当然の取り組みであるべきです。独立系サロンでも高品質なサービスを実現するためには、体験設計が欠かせません。
顧客体験はサロン内に限らず、来店前の段階から始まっています。そのため、プロセスを明確に定義し、季節を問わず一定のクオリティを提供できるよう、具体的で一貫した手順を整備することが重要です。
また、チームを持つ場合には、全員が同じ方針を共有し、顧客に対して一貫した体験を提供できるようにすることが求められます。
顧客体験を高めるアイデアは無限にあります。制約を設けず、創造力を活かしましょう。