YouTuberマネジメント事務所大手のUUUMが2月17日に上場廃止となりました。上場したのが2017年8月。時価総額は一時1000億円を突破しましたが、上場廃止前は10分の1ほどにまで縮小していました。
UUUMを苦しめていたのがショート動画の台頭。今後はフリークアウトの完全子会社として、インフルエンサーマーケティングに注力すると見られます。
3期連続3ケタ増収という驚異的な成長力
UUUMは2014年5月期の売上高が1.6億円ほどでしたが、上場直前の2017年5月期には70億円近くまで拡大していました。3期連続で3桁成長という、凄まじい成長力を見せていたのです。黎明期からのこの爆発的な成長力はVTuber事務所のANYCOLORとよく似ています。
大株主の一人だったヒカキンが、「HikakinTV」を開設したのが2011年7月。このころはYouTuberそのものの認知がほとんどありませんでした。UUUMは2015年に講談社の「ボンボンTV」、2016年にバンダイナムコエンターテインメントの「876TV」を協業体制で運用しています。YouTuberが世間の人びとに浸透し始めたのがこのころでした。
やがてYouTuberは旧来型のメディア、特にTVに変わる新たなエンターテインメントとして注目を集めるようになります。
UUUMはYouTuberの活動をサポートする会社で、収益源は主に2つありました。1つはYouTube広告の収益の20%をマネジメント料として受け取るというもの。もう1つはUUUMが契約する企業とのタイアップ広告(動画)を制作し、プロモーション費用を受け取るというものです。
ただし、アドセンス(YouTube広告)が収益の6割近くを占める主力事業でした。このビジネスモデルが後に火種となります。
動画サービスを取り巻く目まぐるしい変化
2020年に数々の人気YouTuberがUUUMから離反しました。その一部の人びとが動画でその理由を語りましたが、頻繁に言及されたのが20%の手数料をとられることへの不満。その分を会社に徴収されるメリットが少ないというものでした。UUUMのアドセンス収入は2020年5月期から伸び悩みはじめます。
YouTuberは動画の企画から投稿、コメントの対応など一連の活動を自ら行うことがほとんど。UUUMはYouTuberに対して企業案件やイベントを持ち込み、定期的なミーティングを行う対価として手数料を徴収するという仕組みを構築していました。しかし、2020年のコロナ禍でUUUMはタイアップやイベント活動に制限が出てしまいます。ビジネスの根幹が崩れてしまい、不満を引き寄せることになったのです。
※決算説明資料より筆者作成
誤算は続きました。2021年に日本でもショート動画サービスが始まりました。最大60秒の縦型動画で、たちまち人気コンテンツとなります。しかし、これによって広告単価は10分の1以下にまで減少してしまいます。UUUMの収益を圧迫するのはもちろんですが、YouTuberも稼ぎの大半を失うこととなりました。
こうなると、会社が成長できないだけでなく、YouTuberからはショート動画が台頭する中で「UUUMは何をしてくれるのか?」という新たな不満が溜まることにもなります。
UUUMは2022年5月期に減収となり、2億円近い営業損失を出すこととなりました。
※決算短信より筆者作成
「みそきん」の大ヒットで復調の予感はあったが……
そうした状況下で、UUUMはビジネスモデルの転換を図ろうとします。特に力を入れていたのがP2C。Person to Consumerの略語で、影響力のあるインフルエンサーが消費者に向けてグッズを販売するというものです。ヒカキンが「HIKAKIN PREMIUM」というブランドを立ち上げ、2023年に第1弾となるカップラーメン「みそきん」を販売。瞬く間に大ヒット商品になったことはよく知られています。
UUUMは人気YouTuberの活動特性に合わせ、美容やトレーニング、アウトドアグッズなどの販売を急ぐようになりました。2022年5月期4Qはアドセンス以外の売上が、アドセンス売上を上回るようになります。
再生の兆しが到来したようにも見えましたが、これが命取りとなりました。
2023年5月期に7億円近いP2Cブランド棚卸資産評価損を出してしまい、10億円を超える純損失を計上したのです。
棚卸評価損とは、仕入れた値段よりも商品の価値が下がるもの。いわゆる不良在庫が積み上がってしまった状態です。前のめりになって短期間のうちに企画と開発、発注に走り、売れない商品が積み上がるという結果を招いてしまったのでした。
2023年にインターネット広告などを手がけるフリークアウトがTOBを実施。UUUMは子会社化されました。
かつて大炎上したVAZも今では優等生に
UUUMはP2Cブランドの一部を撤退。その他にもゲーム事業やライバー事業なども部分的な縮小を図ったうえ、組織の統合・再編を実施してスリム化を進めました。今後の成長領域として、「既存マーケティング領域においての継続した成長と新規広告事業開発」を掲げています。いわゆるインフルエンサーマーケティングの強化です。
この軌道修正は王道とも言え、堅実な成長を見込めるもの。実は競合がすでに先行しています。かつてヒカルが不満を明かしたことで大混乱に陥ったVAZです。
この会社は2021年12月に共同ピーアールが連結子会社化しています。買収後はクライアントからの依頼をもとにしたマーケティング活動に注力するようになりました。現在の所属クリエイター数は70人で、SNSのフォロワー数は2823万を超えます。VAZは2024年12月期において、四半期で一度も赤字になっておらず、通期黒字化を実現しました。足元では堅実に成長しています。
上場廃止となった後のUUUMがどのように変化するのか、次なる成長ステージには期待が持てます。
文/不破聡