近年、物価高騰や経済環境の変化を受け、国内企業では継続的な賃上げ機運が高まっている。2024年春闘では、賃上げ率が33年ぶりの高水準となり、2025年春闘では中小企業への波及が焦点となる中、企業規模による賃金格差の二極化が重要な課題となっている。
また、社会では賃上げ上昇率が注目されている一方で、賃上げが従業員に与える影響については、依然として十分なデータが示されていない。
そこでNTTデータ経営研究所は、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが提供する「NTTコム リサーチ」登録モニターを対象に「働き方改革2024」に関する調査を実施した。
従業員規模が賃上げの頻度と金額に影響!5,000人以上と99人以下の企業で実施率に最大24ポイントの差
賃上げの実施状況を従業員規模別に見ると、規模が大きい企業ほど賃上げを実施している傾向が明らかになった。
従業員規模「5,000人以上」の企業では、58.9%が「2年間どちらも」賃上げを実施しているのに対し、従業員規模「4,999人以下」の企業では、「2年間どちらも」賃上げを実施した割合は34.5~47.6%にとどまり、最大24ポイントの差がでている。
また、賃上げ額についても、従業員規模が大きい企業ほど賃上げの増加額が高い傾向が確認された。「1万円以上3万円未満」と回答した割合を見ると、「99人以下」の企業では5.6%、「5,000人以上」の企業では15.3%と約3倍の差が見られる。
[図表2]2024年9月月給の増加額(2023年9月月給との比較、従業員規模別、N=1,080)
これらの結果から、従業員規模の違いによって賃上げを実施する能力や頻度に差が生じていることが分かる。特に規模の小さい企業ほど賃上げの実施が難しい状況にあり、待遇面での格差が今後さらに拡大する可能性が示唆される結果に。
2024年春闘で高水準の賃上げも従業員の満足度は全体の20%未満
2023年または2024年の月給や賞与で賃上げを経験した従業員(N=538)を対象に、賃上げ後の賃金が「物価上昇に対して追いついているか」、「自身の業務に見合っているか」について調査を実施。
その結果、「大いに感じている」または「感じている」と回答した人の割合は、物価上昇に対して15.8%、自身の業務に対して19.7%にとどまっていた。一方、「あまり感じていない」または「感じていない」と回答した人の割合はいずれも過半数を上回る結果に。
[図表3]賃上げに対する満足度(物価上昇に対して追いついているか、自身の業務に見合っているか、N=538)
これらの結果から、2024年春闘における賃上げ上昇率は過去に比べて高水準であったものの、多くの従業員が賃上げ後の賃金に満足しておらず、「物価上昇に追い付いていない」、「自身の業務に見合っていない」と感じている現状が明らかになった。
「従業員エンゲージメント」や「勤続意向」を高めるには、賃上げよりも「働き方改革」、「ウェルビーイング経営」、「能力開発・支援」が効果的
2023年で賃上げを経験せず、2024年の月給または賞与、もしくはその両方で賃上げを経験した人を対象に、賃上げが「従業員エンゲージメント※1」および「勤続意向※2」に与える影響について調査した結果、いずれも賃上げによる大きな影響は確認できなかった。
一方、全回答者(N=1,080)を対象に「働き方改革」、「ウェルビーイング経営」、「能力開発・支援」などの取り組みが「従業員エンゲージメント」や「勤続意向」に与える影響を調査した結果、これらに「取り組んでいる」企業は「取り組んでいない」企業に比べ、従業員エンゲージメントや勤続意向が約2倍から3倍高いことが明らかに。
※1 従業員エンゲージメント・・・勤め先に対して誇りを持ち、貢献したいと思う心情
※2 勤続意向・・・今の勤め先で働き続けたいという心情
[図表4]働き方改革が「従業員エンゲージメント」や「勤続意向」に与える影響(N=1,080)
[図表5]ウェルビーイング経営に関する取り組みが「従業員エンゲージメント」および「勤続意向」に与える影響(N=1,080)
[図表6]能力開発や支援に関する取り組みが「従業員エンゲージメント」および「勤続意向」に与える影響(N=1,080)
■NTTデータ経営研究所 ビジネストランスフォーメーションユニット坂本 太郎氏、古山 達也氏、上野 夏鈴氏のコメント
今回の調査により、「賃上げ」にとどまらず、「働き方改革」、「ウェルビーイングの推進」、「リスキリング等の取り組み」において、二極化が生じていることが確認されました。
この二極化は、人材の確保・定着における競争力の差として、より一層格差が広がっていくと予想されます。
一方で、賃上げは衛生要因に過ぎず、働きやすさやウェルビーイング向上の取り組みがなければ、「従業員エンゲージメント」や「勤続意向」を高めることはできません。
人材の流動性が高まる中、企業はこれまで以上に従業員の流出に対して危機感を持つ必要があります。
上記のような取り組みは必須であると同時に、特に優秀な人材に対しては、働きぶりを公正に評価した上で限られた原資の中で処遇上報いることができるよう、評価・報酬制度を見直す等、メリハリある賃上げが重要になってくると考えられます。
調査概要
調査名:NTTコム オンライン共同調査「働き方改革2024」
調査期間:2024年11月5日~2024年11月11日
調査方法:非公開型インターネットアンケート(NTTコム リサーチ クローズド調査)
調査対象:
・全国に居住する20代~50代
・従業員規模10人以上の企業等かつホワイトカラー職種で正社員として就業している方(経営者、役員含む)
調査機関:NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社
実施者:株式会社NTTデータ経営研究所 ビジネストランスフォーメーションユニット
有効回答者数:1,080人(男性:591、女性:489)
関連情報
https://www.nttdata-strategy.com/knowledge/ncom-survey/250218/
構成/Ara