2024年分の所得税の確定申告期間は、2025年2月17日から3月17日まで。そこで、登録者数92万人超のYouTubeチャンネル『脱・税理士スガワラくん』を運営する税理士の菅原由一氏は、30歳以上80歳未満の既婚男女全国500人を対象に「医療費控除」についてアンケート調査を実施し、その結果を公開。同時に「医療費控除」の対象や申請方法などについての解説も披露した。
申請する予定がない人は医療費控除に対する知見が浅い傾向にある?
国税庁によると、2022年度分の医療費控除の適⽤を受けた人は757万人。そこで、YouTubeチャンネル『脱・税理士スガワラくん』を運営する税理士の菅原由一氏は、どれくらいの人が医療費控除を利用し、理解しているのかアンケート調査した。
まず、「今年の確定申告で医療費控除の確定申告をする予定か?」聞いたところ、41.2%が「はい」と回答した。また、医療費控除の確定申告をする予定・しない予定の人それぞれに「医療費控除について知っていることはあるか?」聞いたところ、医療費控除申告する・しないに関わらず、最多は「医療費控除は、原則、年間医療費10万円以上が対象」(する:86.4%、しない:61.9%)、次いで「本人だけでなく、家族の医療費も含めて申告できる」(する:76.2%、しない:37.4%)、「市販の薬代も対象」(する:52.9%、しない:34.0%)となった。また、しない人の27.2%が「あてはまるものはない」と回答しており、全体的にする人に比べ、医療費控除に対する知見が浅い傾向にあることがわかる。
【調査概要】
調査期間:2025年1月17日
調査手法:インターネット調査
調査対象: 30歳以上80歳未満の既婚男女全国
サンプル数:500人(10歳刻みに各100人)
調査機関:Freeasy
■税理士・菅原由一氏が「医療費控除」をわかりやすく解説!
医療費控除を知らないと損しかねません。知らないポイントもあると思うので、下記事項をチェックして、今年は是非申告してみてください。
・医療費控除とは
医療費控除は、所得税と住民税が削減できる所得控除の一つです。配偶者控除・生命保険料控除・社会保険料控除などの所得控除は、年末調整でする方が多いと思いますが、医療費控除は確定申告でないと申告できません。
実は、この医療費控除は、ほとんどの方が受けられる可能性があります。なぜなら、医療費控除は、原則、1年間(1月1日~12月31日)にかかった医療費の合計が10万円以上であることが要件の一つですが、総所得額が200万円未満の方であれば、10万円未満でも受けられるからです。
・医療費控除の条件
医療費控除の対象者は全国民です。本人の分しか申告できないと思っている方も多いですが、家族の分も合わせて申告できます。所得が一番高い家族の所得控除で、家族全員分の医療費の合計額で申告すると、税金の還付金が多くなるのでオススメです。
確定申告の医療費控除は、領収書・レシートや医療費にいくら使ったのかを証明できる書類が必要ですが、もし、領収書を紛失したりもらい忘れたりしたなどの場合は、〇月○日にどこで支払ったかを明記したメモなどがあれば大丈夫です。
また、領収書などを税務署に提出する必要はありませんが、5年間保管しておかなければならないため、注意してください。
・控除の対象
医療機関での診察代や治療費、入院代は、もちろん控除の対象です。但し、入院により生命保険会社から入院給付金などを受け取った場合は注意してください。その入院給付金は医療費から引かなければなりません。
往診の際の医師の交通費や医療機関にかかる際の電車・バス代、また、どうしてもタクシーを使わなければならない状態であればタクシー代も対象となるため、領収書をもらっておきましょう。
ドラッグストアや薬局で買った薬も対象です。レシートをもらい、対象となる薬の部分だけマーカーなどで分かりやすくマークしておきましょう。そもそも10万円を超えないだろうという前提で、レシートを捨ててしまっている方が多いです。念のため、ドラッグストアや薬局で買った薬のレシートは年末まで取っておいてください。
車椅子や松葉杖などの医療器具費、介護保険の対象となる介護費用も対象です。それから、歯は、メンテナンスなど健康維持のための費用は対象外ですが、治療のための費用であれば対象です。子供の歯並びの矯正は対象ですが、大人の矯正は対象外です。銀歯やインプラント、セラミックも治療のためであれば対象です。
さらには、治療目的のリハビリやマッサージ、鍼灸代も対象となります。但し、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師のいずれかの資格を持つ者の施術でなくてはなりません。肩こりや腰痛などの悩みを持っている方は、医療費控除を受けられるため、是非利用してみてください。
・医療費控除の確定申告方法
医療費控除の確定申告はスマホでできます。確定申告期間中(2025年2月17日~3月17日)に、昨年の医療費の総額を入力した確定申告書をスマホから提出します。また、確定申告の期間に合わせて無料の確定申告相談会もあるため、領収書やレシートなどを持参して集計し、提出する方法もあります。
・医療費控除の注意点
マッサージなども治療目的であれば医療費控除できます。交通費もしっかり集計しましょう。公共の交通機関ではなかなか領収書は出ないため、メモ書きで残しておきましょう。これは塵積って山となるので、非常に大切です。ドラッグストアや薬局で買った薬のレシートも捨ててしまうと年末になって後悔するため、医療費の集計袋を用意して、1年間貯めておくと良いです。
また、過去の医療費は5年前まで遡って申告できます。もし、過去の医療費の領収書などが残っていれば、集計して、申告のし直しをしてください。
構成/立原尚子