エストニア政府機関であるエンタープライズ・エストニア(Enterprise Estonia)は、2024年12月、エストニア政府による全ての行政サービスが、オンライン利用が可能な100%電子化を達成したことを発表した。
本稿では同機関発行のリリースを元に、その概要をお伝えする。
世界で注目を集める「電子国家」エストニア共和国
バルト三国の最北に位置するエストニア共和国(以下エストニア)は、人口約136万人、国土も日本の9分の1ほど(4.5万平方km)の小国でありながら、最先端の「電子国家」として世界中から注目され、各国から多くの視察団が訪れている。
というのも世界初の電子住民プログラム「e-residency」を導入したほか、選挙における電子投票システム「i-Voting」によるオンライン投票の実施など、これまで、99%の行政サービスの電子化を達成しているからだ。そして今回の「離婚届」の電子化により、100%電子化を実現した。
■エストニア行政サービスの高いオンライン利用率
エストニアにおける行政サービス電子化の取組みの結果、現在、出生登録のオンライン利用率は85%にのぼり、婚姻届のオンライン利用率は56%、離婚届のオンライン利用率は53%に達している。
高い利用率の背景には、国民IDカードとの連携によって手続きが簡素化されていること、利用者視点の設計によって作られたツールやガイダンス等が充実していること等が挙げられる。
■行政サービスが電子化された背景
エストニアは2,000以上の島々に囲まれ、豊富な自然資源を有する国だ。一方で、国内に地域や居住エリアが離れて点在していることから手続きのオンライン化、電子化を進める必要があった。
1990年代、インターネットの普及を受け、デジタル国家の実現を目指す人々による会議が開かれ始めた。その後、政府を中心として資金の確保が進み、民間企業や技術者などの手によって電子化が推進された。
■オンラインで行う離婚届について
2024年12月に発表された離婚届の電子化をもって、エストニア国内の全ての行政サービスが電子化された。離婚届の手続きの大半をオンライン上で行なうことが可能で、職員との面会は1度だけで完了する。
財産分与ツール、親権の取り決めに関するガイダンス等もあり、利用者視点に立った設計がなされている。2024年12月から2025年1月6日までに届けられた310件の離婚申請のうち165件が電子申請され、短期間で既に2人に1人が利用するほど普及している。
<エストニア 前大統領 ケルスティ・カリユライド(Kersti Kaljulaid)氏のコメント>
国中のどこからでも行政サービスへのアクセスが可能になりました。多くの政府や機関が困難と考えてきた業務の効率化やサービスの電子化が可能であることも証明できました。エストニアはデジタルガバナンスのロールモデル国家として、日本のDXの発展を支援する重要なパートナーの役割を果たせることを確信しています。
<エンタープライズ・エストニア 日本支局長 尾崎健二 氏のコメント>
エストニアでは、効率化とリソースの最大化を目的として“100%電子化”に取り組みました。小さな国でありながら、明確な競争優位性と世界的なベンチマークを持つデジタル社会を作り上げてきました。シンプルであり、効率化を実現した本取り組みを通して、エストニアのデジタル専門知識が世界中に発信され、他の国や地域がDXを効果的に進めるための一助となることを望んでいます。
エストニア共和国について
エストニアは、オープンで、かつ効率的なテクノロジーを用いて、世界で最も洗練されたデジタル国家のひとつを作り上げた。これにより、エストニアはデジタル・イノベーションの世界的リーダー、デジタル行政のパイオニアとしての位置を確立した。
また、エストニアは技術革新に加え、ビジネス面や観光面でも非常に優れた機会を提供している。代表的な例として「e-Estonia」、「Visit Estonia」が挙げられる。
「e-Estonia」は、エストニアの革新的なデジタル社会、先駆的な電子政府、電子住民プログラム、など最先端のデジタルソリューションを紹介している。エストニアとの貿易は、イノベーティブなエストニア経済と外国企業をダイナミックに結びつけ、グローバル市場へのアクセスを提供する。
「Visit Estonia」は、エストニアを自然と文化がイノベーションと出会う場所として紹介している。中世の歴史的な魅力、素晴らしい自然景観、活気ある現代都市の雰囲気が融合したユニークな魅力を旅行者に提供。 このプロジェクトは欧州連合(EU)のNextGenerationEUの資金援助を受けている。
関連情報
https://e-estonia.com/bureaucrazy/
構成/清水眞希