「切電(きりでん)」という言葉をご存知でしょうか。
近年、カスハラ(=カスタマーハラスメント)対策に力を注ぐ企業が増えてきています。
「お客様は神様」という考えから従業員を守る方針へとシフトチェンジする企業も珍しくありません。
「切電(きりでん)」は、そのようなカスハラにまつわる言葉になっていますので紹介したいと思います。
「切電(きりでん)」の意味
「切電(きりでん)」とは、「電話を切ること(=通話を終わらせること)」です。
特にコールセンターのスタッフ等が迷惑客の電話に対し、能動的に通話を終わらせることを指す傾向にあります。
以前より、コールセンターの業界用語として「切電(せつでん)」という言葉が存在していましたが、近年のカスハラ対策から従業員を守る目的で電話を切る選択肢に注目が集まり、「切電(きりでん)」という言葉として広まりつつあります。
首都高の「切電マニュアル」
「切電(きりでん)」と言う言葉に注目が集まったのは首都高速道路株式会社の「切電(きりでん)マニュアル」という取り組みです。
首都高速道路では、首都高お客さまセンター等に年間約63万件の問合せを受けています。
同社は一つ一つの問い合わせに対し、丁寧かつ真摯に対応することを基本としてながらも、時には厳しい対応を迫られることもあるという。
これまで専門家の助言を受けるなど様々な取組みを実施してきたところ2023年5月に、社員を守るために高速道路会社としては初の「切電(きりでん)マニュアル」を策定し、運用を開始。
合わせて2024年6月からは暴言を含むメール問い合わせにも対応しないことしている。
「切電マニュアル」は、次のような内容になっている。
・これまでどおり、お客さま等との電話のやり取りは、丁寧かつ真摯に対応することが基本
・レアケースの「難クレーム」事案については、社員を守る観点から以下のいずれかに該当する場合には、相手にその理由を伝えた上で、電話を切る運用とした
① 回答内容に問題がないにもかかわらず、30分以上同じ内容を繰り返し主張される場合
② 要求内容が不当である場合
③ 威圧的な発言・口調である場合
同社は、2024年8月末までに22件の切電を実施(主に30分超の電話)。
いずれもその後トラブルに発展していないと発表をしている。
また、「会社が社員を守ってくれると感じ、これまで以上にお客さま対応に集中できる」 「安心してお客さま対応ができる」といった声が社員から集まっていると話す。
厚生労働省は2024年12月、全ての企業へカスハラから従業員を保護する対策を義務付ける方針を示しています。
首都高速道路の取り組みは多くの企業にとっても参考になることでしょう。
文/編集部