広告ブロックが検出された!

このサイトは存続するために広告に依存しています。 私たちをサポートするために、ブラウザ内の広告ブロックを無効にすることを検討してください。 ありがとうございます!

Suicaをタッチしなくてもいい日が来るのか?ついに発表された「ウォークスルー改札」の〝ちょっと怖い〟仕組み

アットダイム 1 週 前
Facebook Icon Twitter Icon

我々は普段、交通系ICカードというものを自動改札機のカード認識パッドにかざしている。

この動作、実は10年以内に「過去のもの」になるかもしれない。

現在、JR東日本はSuicaの大手術を行おうとしている。システム自体をセンターサーバー化し、利用者の現在の状況に応じて必要な情報をクラウドから提供しようという仕組みへ移行しつつあるのだ。その一例は、スマホの位置情報と連携した「乗車賃の自動引き落とし」。Suica対応改札機がない駅でも、単に構内へ足を踏み入れるだけで乗降車を認識するというものである。

しかし、この「タッチ&ゴー」は本当に実現するのか?

大躍進を遂げたタッチクレカ

2024年は、公共交通機関の乗車決済分野においてクレジットカードが大躍進した年でもあった。

より正確に書けば、それはクレカのタッチ決済である。三井住友カードが実質主導する鉄道・バスのタッチ決済乗車が全国各地で導入されるようになり、我々は交通系ICカード以外の有力な決済手段を目の当たりにした。そして、これには交通系ICカードのシステム更新料は地方の交通事業者にとっては極めて巨額という問題も浮き彫りにした。

電車やバスにタッチ決済対応クレカで乗れるようにしよう、という構想は実はCOVID-19のパンデミック以前から存在した。が、その当時想定されていたのは主に外国人観光客の利用である。今現在は観光客ではない沿線住民にもタッチクレカを使ってもらおうという構想で、大々的な実証実験が行われているのだ。

それはもちろん、クレカの更新によるタッチ決済対応化が進んでいる証でもある。

そして、この記事では便宜上「クレカ」という表現で統一しているが、これにはデビットカードやプリペイドカードも加わっている。国際クレカブランドが付与されているプリペイドカードであれば、未成年者でもこれを所持することができる。交通系ICカードと違って、銀行口座に直接紐付けたりアプリで簡単に残高チャージができる点も魅力だ。

2028年度までに新アプリをローンチ予定

同じ頃、JR東日本は『Beyond the Border』というビジネス成長戦略を温めていた。

「Suicaの当たり前を超える」というキャッチコピーのこの戦略は、上述のようにSuica自体をセンターサーバー化し、単なる乗車手段もしくはキャッシュレス決済手段から巨大な情報を逐次提供する総合プラットフォームにしようという内容だ。JR東日本の沿線地域を、自治体も巻き込んでDX化しようという狙いもあるようだ。

ひとまずは2028年度までに、従来のモバイルSuicaとはまた違う「Suicaアプリ(仮称)」をローンチするとしている。鉄道チケットのサブスクリプションも計画されていて、たとえば月数千円を支払えばどの駅に行こうと運賃が5割引になるというサービスが想定されている。このあたりは今の時点で具体的な計画がある話というわけではないが、Suicaがより多くのニーズに対応するようになるというのは間違いないだろう。

ウォークスルー改札に対する期待と不安

そして、一番の本命はウォークスルー改札である。

その駅に交通系ICカード対応自動改札機がなくとも、スマホやスマートウォッチの位置情報を基に乗降車を自動認識し、運賃が引き落とされる……という仕組みだ。

位置情報を活用する。しかしこれは、不安や危うさと常に隣り合わせの技術でもある。既にSNSでも「自分の位置情報を知らず知らずのうちに使われるのは怖い」という声が上がっている。クラウドに集めた情報を活用するということは、利用者の個人情報を取り扱うということと同義だ。そのあたりの法整備が10年前よりも格段に進んだとはいえ、JR東日本は利用者に対する丁寧な説明が必要になるはずだ。

また、ウォークスルー改札の利用は「スマホの位置情報機能をオンにしておかなければならない」という前提があるはずだが、これをやると電池の消費がどうしても早くなる。故に筆者は、必要のない時は位置情報をオフにしている。が、ウォークスルー改札なるものが当たり前になると、位置情報を常時オンにしておく必要があるはず。それまでにより性能の良いバッテリーが登場してくれたらよいのだが……。

本当に10年以内に実現するのか?

また、2024年12月時点から10年以内にウォークスルー改札を実現させるというJR東日本の構想にも、筆者はやや懐疑的である。

このウォークスルー改札が、果たして山手線や中央線の平日通勤ラッシュを滞りなくさばけるかというのはまったくの未知数。それよりも遥かに利用者数の少ない地方都市の駅で先行導入するとしても、該当自治体との連携は必要不可欠だ。まずはどこの駅・路線・地域で実証実験を行うのか、そうした具体的な計画が既に公表されている……というわけではまったくないのだ。

それを考慮すると、10年以内のウォークスルー改札実現は一般向け体験イベントというレベルならともかく、実用化となるといささかタイトなスケジュールに思えてしまう。

が、交通系ICカードの雄であるSuicaが我々の常識を覆すような大幅進化の計画を公表したことには、極めて大きな意義が含まれている。

【参考】Suica の当たり前を超えます-JR東日本

取材・文/澤田真一

2028年度に登場予定の「新Suica」とは?交通系ICカードの長所を活かした新しいビジネスチャンス

交通系ICカードは、もはやただの決済手段ではない。これには様々な情報が詰まっている。 この情報を生かしたビジネス成長戦略をJR東日本グループが打ち出していること...

記事全体を読む