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説明できる?「フールプルーフ」と「フェイルセーフ」の意味と違い

アットダイム 1 週 前
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フールプルーフとは、誤った操作や取り扱いによるトラブルを未然に防ぐ設計手法のことだ。私たちが日常的に利用している電化製品や自動車、コンピュータなどにも取り入れられている。本記事では、フールプルーフの意味や目的、使用例を紹介するとともに、関連性の深い設計手法であるフェイルセーフとの違いについても解説していく。

フールプルーフとは

ここでは、フールプルーフの意味や使用例などを解説する。

■フールプルーフの意味と目的

フールプルーフとは、安全性を向上させるための設計手法の一つである。具体的には、使用者が誤った操作や取り扱いを行ったとしても事故や故障などのトラブルが発生しないようにする設計手法のこと、あるいはそもそも誤った操作や取り扱い自体を行えないようにする設計手法のことを指す。

例えば、電子レンジは扉が完全に閉じた状態でなければ作動しないことは多くの方がご存じであろう。これは電子レンジが発するマイクロ波から人体を守るための設計で、フールプルーフの分かりやすい例だ。

もちろん、そもそも誤った操作・取り扱い自体を行わないことが理想である。しかし、人間は完璧な存在ではないため、それを期待するのは現実的ではない。「人を変えるのではなく、仕組みや仕様を変えて人の安全を守る」、この発想がフールプルーフの根底にある。

また、フールプルーフは、安全性向上だけでなく、業務効率化やコスト削減なども期待できる設計手法だ。例えば、生産現場において、機械の誤った操作により物損事故が発生すれば修理コストなどがかかる上、後工程にも支障が出てしまう。しかし、フールプルーフ設計が施されていれば、そのような事態を防げるため、結果として業務効率化やコスト削減が期待できるというわけだ。

なお、フールプルーフ設計を導入しても100%の安全性が確保されるわけではないことには注意を払いたい。設定ミスやプログラムのバグ、電源トラブルなど、何らかの事情により必要なときに機能しない場合も考えられる。そのため、過度な信頼はせず、安全への配慮を常に持ち続けることや、二重三重の安全対策を講じることなども意識したい。

ちなみに、フールプルーフは、英語の「fool(愚か者)」と「proof(耐える)」から成る造語で、「誰でも問題なく扱える設計手法」などと意訳される。

■フールプルーフが特に重要な業界とは

フールプルーフを特に重要視する業界として挙げられるのが、IT業界と製造・物流業界だ。

IT業界では、誤った操作・取り扱いがデータ消失や不正アクセスなど、重大な問題につながることがあるため、フールプルーフが重要視されている。

製造・物流業界では、業務で機械やロボットが多用されており、それらの誤った操作・取り扱いにより人命にかかわる事故が引き起こされることもあるため、こちらでもフールプルーフが重要視されている。

さらには、私たちが普段使用している製品においてもフールプルーフが取り入れられており、前述した電子レンジの例も正にそうだ。

ここで、IT業界、製造・物流業界、そして製品開発分野におけるフールプルーフの使用例を紹介する。

・IT業界におけるフールプルーフの使用例

[ファイルの誤削除防止]
重要なファイルを誤って削除しないよう、削除前に「本当に削除してもよろしいですか?」と確認するダイアログボックスを表示する

[データの自動保存]
システムを意図せず終了した場合や電源トラブルなどの予期しない事態が発生した場合でもデータが失われないよう、自動的にデータを保存する

[システムの最小権限付与]
不正アクセスなどのリスクを最小限に抑えるために、各使用者に対して与える権限を必要最低限にする

・製造、物流業界におけるフールプルーフの使用例

[工作機械の怪我防止]
誤って可動部に手を挟まないよう、両手で操作しないと作動しない仕組みにする

[生産ラインの異物混入防止]
異物の混入を防ぐため、特定の形状のものしか通過できない仕組みにする

[フォークリフトの自動ブレーキ]
接触事故を起こさないよう、人や物が接近した場合に自動でブレーキを作動させる仕組みにする

・製品開発におけるフールプルーフの使用例

[電子レンジの電磁波漏洩防止]
電磁波(マイクロ波)が人体へ悪影響をおよぼさないよう、扉が完全に閉じた状態でないと作動しない仕組みにする

[自動車の急発進防止]
エンジン始動時の急発進を防ぐため、ブレーキを踏んでいない状態ではエンジンをかけられない仕組みにする

[薬の誤飲防止]
誤って別の種類の薬を服用しないよう、薬ごとにパッケージの色や形状を変える

フールプルーフとフェイルセーフの違い

フールプルーフと似た設計手法としてフェイルセーフがある。ここでは、フェイルセーフの意味やフールプルーフとの違いなどを解説する。

■フェイルセーフの意味

フェイルセーフとは、故障や異常などのトラブルが発生した際に、自動的に安全な状態に移行するような設計手法のことを指す。トラブルの発生はやむを得ないという前提で周囲の人々や環境への被害を最小限に抑えることを主な目的としている。

例えば、石油ファンヒーターには転倒時に自動消化する機能が備わっていることは多くの方がご存知であろう。これがフェイルセーフの分かりやすい例である。

ちなみに、フェイルセーフは、英語の「fail(故障)」と「safe(安全)」から成る造語で、「トラブルが発生しても安全を確保する設計手法」などと意訳される。

■フールプルーフとフェイルセーフの違い

フールプルーフとフェイルセーフは混同しやすいため注意しよう。どちらも安全性を向上させるための設計手法だが、その目的は異なる。

フールプルーフはトラブルの発生自体を防ぐことを目的としている。一方で、フェイルセーフはトラブルが発生することを前提としてその影響を最小化することを目的としている。また、フールプルーフは基本的には誤った操作・取り扱いに対処する設計手法であり、フェイルセーフは誤った操作・取り扱いに限らず、あらゆる場面に対処する設計手法である。

なお、フールプルーフとフェイルセーフは、組み合わせることでより高い安全性を期待できる。

■フェイルセーフの使用例

フールプルーフと同様、フェイルセーフもさまざまな分野で活用されている。ここで、フェイルセーフの使用例を紹介する。

[石油ファンヒーターの自動消火]
火災リスクを軽減するため、転倒時に自動的に消化する仕組みにする

[エレベーターの非常ブレーキ]
ケーブルトラブルなどによる落下事故を防ぐため、一定以上の速度で急降下した場合に自動で非常ブレーキを作動させる仕組みにする

[電車の不適切運転防止]
運転手の居眠りや体調不良などによる事故を防ぐため、コントローラーを握っていない場合に加速できない仕組み、もしくは停止する仕組みにする

[医療機関の自家発電]
自然災害などにより停電が発生しても人工呼吸器などの重要な医療機器が停止しないよう、自家発電システムを備える

まとめ

フールプルーフとフェイルセーフは、どちらも安全性を向上させるための設計手法だ。場合によっては、安全性の向上だけでなく、業務効率化やコスト削減などのメリットも期待できる。この2つの設計手法はビジネスマンであれば知っておいて損はないであろう。業務プロセス改善やリスク管理、商品開発など、あらゆる分野に応用できる。

 

松下一輝(まつしたいっき)

大学院修了後、ITエンジニアとして大手システムインテグレータに入社。通信キャリアを顧客とする部署に配属され、業務システムやWebアプリケーションなどの設計・開発業務に従事する。その後、文章を書く仕事に興味を持ち、ライターに転身。ITやサイエンス、ビジネスといった分野の記事を執筆している。

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