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ビジネスシーンにおいて「尽力いたします」とはどういう意味?

アットダイム 1 週 前
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「尽力いたします」というフレーズは、ビジネスメールや挨拶などで見聞きすることも多い。特に改まった場面では活用したいところだが、正しい意味を知らずに間違った使い方をして、恥をかくこともあるかもしれない。

ビジネスパーソンにとって、正しい言葉遣いは必須スキルだ。この記事では、ビジネスシーンの頻出ワードのひとつ「尽力いたします」の意味と例文、さらに敬語表現の注意点や類語・言い換えも解説する。

尽力の意味とは

プライベートでは、多くの方が尽力という単語をあまり使わないのではないだろうか。それだけに、あらためて意味を問われると、言葉に詰まってしまう。

まずは、尽力という言葉の正しい意味から確認しよう。

■尽力の意味

「尽力」とは、特定の目標に向かって、全力を尽くし達成しようとする行為をいう。

個人だけでなく、組織やチームへの貢献を表現する場合にも使われるため、挨拶やビジネスメール、志望動機など、様々なビジネスシーンで活用できる。

また、自分にも相手にも使用でき、上司や取引先、顧客など目上の人向けのフレーズとしても適切だ。

似た言葉に「頑張る」があるが、「頑張る」は、困難にめげずやり抜くことを表す。その一方で、我を張るという意味合いもあるからか、どちらかというと「試合に勝つために頑張る」といった私的なニュアンスが強い。そのため、改まった場面では、若干幼稚な印象を与える恐れがある。

尽力の語源

尽力は、「つきる」「全部出しきる」などの意味の「尽」という字と、「つとめる」「はげむ」といった意味の「力」で構成された熟語である。

その歴史は古く、中国の古典にも記載が認められる。日本では、明治時代の文献に初出の実例がある。

尽力の敬語表現

尽力に尊敬の意味を表す接頭語「ご」をつけて「ご尽力」となる。

目上の人が骨を折ってくれたことへの感謝を示すことができ、「感謝申し上げる」と組み合わせることで、例文のように挨拶やメールの締め括りとして活用できる。

・例文:「皆様のご尽力に深く感謝申し上げます」

・例文:「この成果は貴社のご尽力の賜物でございます。心より感謝申し上げます」

また、相手の貢献が結果に結びつかなかった際は、感謝とお詫びの気持ちの双方を伝えることもできる。

・例文:「このたびは、ご尽力くださいましたのに申し訳ございません」

このように、尽力は挨拶やお礼、依頼など、様々なビジネスシーンで活用できる便利なフレーズだが、敬語表現での使用にあたっては、注意点が3つある。

二重表現

「二重表現」とは意味が重複する表現のことで「重言(じゅうげん)」ともいう。日本語の表現としては基本的に誤りで、文化庁も「むやみに用いないようにする」との見解を出している。

尽力における二重表現は、「尽力を尽くす」「尽力を出し切る」といった言葉である。尽力という単語自体に「力を尽くす」「熱心に努力する」という意味があるからだ。

他に「尽力を注ぐ」も、力を尽くすことを注ぐという不自然な言い回しになるため、使わないほうがいいだろう。

自分の過去の行為には使わない

たとえば「尽力して参りました」「尽力させていただきました」などは、押しつけがましく高圧的な印象を相手に与える可能性がある。

特に「尽力して参りました」」は、異動先や転職先での挨拶のような自分の過去の実績を語る際につい使ってしまいがちだ。気をつけていきたい。

依頼・お願いには使わない

尽力には、他人のために最大限の力で尽くすという意味合いがある。そのため、相手への依頼やお願いに尽力を使うと、相手に力を尽くすことを強制することになり、失礼にあたる。この場合は「これからもご尽力いただけましたら幸いです」など、これまでの相手の支援や協力への感謝を伝える表現にしよう。

※出典:文化庁「新しい「公用文作成の要領」に向けて(報告) 」

ビジネスシーン別。「尽力」の使い方

次に、「尽力」の使い方を、ビジネスシーン別に例文を挙げながら紹介していこう。

尽力いたします

「尽力いたします」は、尽力するの謙譲語「尽力いたす」に丁寧語の「ます」をつけた表現である。

何かを依頼されたときに全力で努力するという意気込みを表すことができ、転職先や異動先での挨拶など、自分のポジティブな気持ちを伝えたいシーンで活用できる。

【転職後、配属された部署での初日の挨拶】

・例文:「一日も早く営業目標を達成できるように尽力いたします」

【新規プロジェクトを任された際の挨拶】

・例文:「今回の新規プロジェクト成功のために尽力いたします」

【顧客からお礼を伝えられたときの感謝の言葉に添える一言】

・例文:「今後もお客様のご期待に沿えるよう尽力いたします」

尽力させていただきます

「させていただきます」は、「相手に許可を得て、何かをすることを許してもらう」という意味の謙譲語。上司や取引先などに向けて「少しでも力になりたい」というニュアンスを伝えるフレーズだ。

【上司へのメールの締めの一言】

・例文:「営業部の一員として、微力ながら尽力させていただきます」

【取引先への年末の挨拶メールの締めくくりの文章】

・例文:「来年も御社のご発展に貢献できるよう、尽力させていただきます」

【初回のプロジェクト会議での挨拶】

・「プロジェクトの目標達成に向け、尽力させていただく所存です」

ところで、「尽力させていただきます」には、思わぬ落とし穴がある。

許可を得る立場やシーンではないときに使うと、過剰な表現になってしまうところだ。相手との関係性や場面などを考えて使わないと、相手に図々しい印象を与えてしまいかねない。くれぐれも失礼にあたらないよう十分注意していこう。

■尽力して参ります

「参ります」は、動詞「行く」の謙譲語「参る」に丁寧語「ます」をつけた表現で、相手に対する尊敬がより際立つ表現である。取引先や上司などに、自分の決意や真摯な姿勢をアピールできる。また、誠実なニュアンスも含んだ言い回しなので、面接時にも活用できそうだ。

【顧客からサービスに関する要望を伝えられた際のメール返信文】

・例文:「サービス改善に尽力して参ります」

【研修後、人事担当者への報告メールの締めの一言】

・例文:「今後、一層自己のスキアップのため尽力して参ります」

【面接時、志望動機の締めくくりとして】

・例文:「御社に貢献できるよう尽力して参ります」

尽力の類語と言い換え表現

尽力の類語・言い換え表現には「努力」「心がける」「勤しむ」「取り組み」などがある。また、ビジネスシーンでは、目上の相手に対して「ご支援」「ご助力」「ご協力」「お力添え」や、自分の努力をアピールする「精進」「邁進」「貢献」や「励む」などの言葉がある。

各フレーズのニュアンスの違いとビジネスシーン別の使用例は、次表を参照してほしい。

類語・

言い換え

ニュアンス

ビジネスシーン

例文

ご支援

力を貸して相手を支える

取引先への挨拶文の冒頭

いつもご支援をいただきまして、誠にありがとうございます。

ご助力

切実に頼む気持ち強め

取引先への協力を依頼する

お忙しいところ誠に恐縮ですが、ご助力いただけますと幸いです。

ご協力

ややくだけた表現

取組への協力依頼を社内の関係部署にメール

業務改善の取組強化のため、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

お力添え

比較的軽めの支援や協力

同じ部署の先輩に助言を求める

来週の会議資料の作成につき、お力添えいただけますでしょうか。

精進

懸命に努力する

取引先への年始の挨拶メール

社員一同、今年も精進して参ります。

邁進

目標に向かって恐れることなく突き進む

異動先での挨拶

心機一転、チームの一員として全力を尽くし、業務に邁進する所存です。

貢献

会社や社会のために力を尽くす

履歴書の志望動機欄の締めの文章

貴社の躍進に貢献できるよう努めます。

励む

熱心に物事に取り組む・

ややカジュアル

自己評価シートの来期の目標欄の締めのフレーズ

来期は業績目標達成に向け、一層業務に励みます。

このように、似ているようで少しニュアンスが違う。そのため、フレーズによって使えるシーンも異なるので注意が必要だ。

まとめ

「尽力いたします」は、異動先での挨拶など、自分の意気込みや積極的な気持ちを表現するシーンなどに適した言葉だ。また「尽力させていただきます」「尽力して参ります」というバリエーションもあるが、使用するには、二重表現などの敬語表現3つのポイントに注意する必要がある。

さらに、尽力には「ご支援」や「精進」などの類語・言い換え表現もあり、それぞれニュアンスや使用できるシーンが異なる。

ビジネスの場での言葉遣いは難しい点もあるが、ひとつひとつの言葉の意味やルール、例文を丁寧に確認し、適切なフレーズを活用していきたい。

 

文/木戸史(きどふみ)

立命館大学文学部卒業後、営業、事務職、編集アシスタントなどを経て、社会保険労務士事務所で社労士として勤務。現在はライターとして活動しており、社労士として多くの中小企業に携わった経験を生かし、ビジネスマンに役立つ法律知識をできるだけわかりやすく発信している。

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