適宜の2つの意味
適宜とは、状況や条件に応じて適切な対応を取ることを指す言葉です。適宜の「適」にはふさわしいという意味が、「宜」にはほどよい、都合がよいという意味があります。
そのため、この2つの言葉を合わせて、「状況に合っている」「状況に応じた対応を取る」ことをあらわします。
やや堅苦しいものの、ビジネスシーンや日常生活まで幅広く使われる表現です。具体的に決まった判断や行動は求められておらず、その時々の状況や必要性を踏まえて、必要な方法を選択することをあらわす言葉といえるでしょう。
ここでは、適宜の意味である「状況に合っている」と「各自が判断して行動する」について、それぞれの意味を確認しましょう。
参考:デジタル大辞泉
■状況に合っている
状況に応じた対応をあらわす言葉として、適宜を使うことがあります。次々と変わる状況に合わせて物事を行うというニュアンスです。
■各自が判断して行動する
各自がその場の状況に合わせて、自分で判断・行動する必要がある場面でも、適宜という言葉を使います。決まった答えはなく、状況を踏まえて柔軟に行動することをあらわすのに適した言葉です。
適宜の使い方と例文
ここでは、適宜を実際にどのように使うかについて、例文とともにご紹介します。
■「状況に合っている」という意味で使う場合
「状況に合っている」という意味で適宜という表現を使う場合は、以下のように使用しましょう。状況に応じて、フレキシブルに対応するニュアンスが含まれます。
・講義の際は、担当者が適宜資料を配付します
・閉店は20時ですが、事前にご相談いただければ適宜対応いたします
・業務特性上、夏期休暇は一斉取得ではなく部署ごとに適宜取るようにしている
■「各自が判断して行動する」という意味で使う場合
適宜には、「各自が判断して行動する」という意味で使うこともあり、例文は以下のとおりです。ルールや指示通りに動くのではなく、各自が自ら考える必要がある際に使います。
・追加発注は、各店の店長判断により適宜行ってください
・この中から、適宜必要なものを選んで使用してもらってかまいません
・常識の範囲であれば、細かい部分については適宜対応してもらって差し支えありません
ビジネスシーンで適宜を使う際の注意点
適宜はビジネスシーンでは比較的よく使われる表現ですが、解釈の違いが生まれやすい点に注意が必要です。また、目上の方には基本的に使わないほうがよいでしょう。ビジネスシーンで適宜を使う際の注意点について、解説します。
■解釈の違いが生まれやすい
適宜という表現を使用する際は、解釈の違いが生まれやすい点に注意が必要です。適宜という表現が指す適切な判断や行動が、自分と相手でズレていることがあるためです。
たとえば、上司が部下に対して「なにかあれば適宜報告するように」と伝えたとします。その際、上司と部下が考える「報告が必要な基準」は、それぞれ異なっていることは少なくありません。
部下は「大きな問題はなかったから、とくに報告はしないで大丈夫だろう」と判断する状況であっても、上司は「なぜ報告しなかったのか」と不満を持つという事態は往々にしてあります。
このように「適宜」が指す内容が曖昧な場合は、コミュニケーションの齟齬を避けるために、具体的な基準や範囲を伝えたりすり合せをしたりすることが大切です。
■目上の方には使わない
適宜という表現は、目上の方に対して使用するのは控えたほうがよいでしょう。適宜には、「自分で判断して対応してください」という、「指示」のニュアンスが含まれるためです。
たとえば、「適宜対応してください」と依頼した場合、上から目線である印象を与えかねません。
したがって、上司や取引先などに対しては適宜を使用することは避け、どうしても使う場合は「適宜◯◯していただけますと幸いです」というように、敬語表現を添えて使いましょう。
なお、上司や取引先に対して「適宜ご報告いたします」と伝えるなど、自分が行動する側であれば問題はありません。このように、相手が目上の方であっても自分が指示や依頼をする立場でなければ、適宜という表現は失礼にあたらないことも押さえておきましょう。