レピュテーションリスクとは何か
レピュテーションリスクは、企業の評判や信用に関わる重大なリスクです。情報化社会が進展した現代、リスクの管理や制御がより重要性を増しています。言葉の意味と企業に与える影響について理解を深めましょう。
■レピュテーションリスクの意味
レピュテーションリスクとは、企業の評判や信用が損なわれることで生じるリスクです。レピュテーション（reputation）は『評判』や『風評』、リスク（risk）は『危険が生じる可能性』や『危険度』を意味します。
個人の発信が瞬時に広まる現代、企業は常に社会の監視下にあります。ネガティブな情報の拡散によって企業のブランド価値や信頼性が低下すれば、ビジネスの長期的な展望に悪影響が及ぶでしょう。
信頼の回復には多大な時間と労力を要するため、企業はレピュテーションリスクの予防と適切な管理を経営課題として認識する必要があります。
■企業に与える影響と損失
レピュテーションリスクは企業に大きな損失をもたらします。リスクが表面化した場合、顧客離れが相次ぐでしょう。信頼を失った企業の製品やサービスは敬遠され、売上減少による業績悪化が生じます。
株式会社の場合は、株価の下落が起こるかもしれません。レピュテーション毀損によって企業価値が低下すれば、投資家や取引先から見放される可能性があります。
企業イメージの悪化は、従業員のモチベーション低下や離職率上昇を引き起こします。優秀な人材が他社に流出すれば、事業継続が困難になる恐れもあるでしょう。
レピュテーションリスクの主な原因
(出典) pixta.jp
レピュテーションリスクには、さまざまな原因が存在します。代表的な原因として『企業のコンプライアンス違反』『従業員の不適切な言動』『ユーザーによる評価』の三つを解説します。
■企業のコンプライアンス違反
企業のコンプライアンス違反は、レピュテーションリスクの主要因です。法令遵守や倫理的行動の欠如は、企業の信頼性を直接的に損なう可能性があります。
- 従業員が顧客名簿を業者に販売する
- 利益水増しのための不正会計を行う
- 外国産食品を国産と偽る
このような事態は、顧客離れや取引停止などの経済的損失を招くだけでなく、信用回復に多大なコストと時間を要します。企業は、コンプライアンス違反を未然に防ぐ多角的な対策を講じなければなりません。
■従業員の不適切な言動
従業員の不適切な言動も、企業のレピュテーションリスクの大きな要因となります。情報が瞬時に拡散されるSNS時代、その影響力は計り知れません。
例えば、飲食店従業員による商品の不適切な扱いを撮影した『バイトテロ動画』の投稿は、企業イメージを著しく損ない、深刻な風評被害をもたらします。
一従業員が行った行為でも、適切な教育や管理を怠ったとして、企業の責任が問われます。一人一人が責任ある行動を取れるように、企業は教育とルール作りに力を入れる必要があるでしょう。
■ユーザーによる評価
ユーザーによる評価は、企業イメージを大きく左右します。中には、根拠のない噂や誹謗中傷も存在します。しかし商品やサービスに対する不満の声がSNSで拡散されると、企業イメージが急速に悪化してしまうのが実情です。
口コミサイトやレビューサイトにおける低評価や否定的なコメントは、潜在顧客の購買意欲を低下させ、売上に直接的な影響を及ぼす可能性があります。
企業は、顧客満足度の向上に努めるとともに、オンライン上の評価を常にモニタリングし、適切に対応しなければなりません。
レピュテーションリスクを回避するには？
(出典) pixta.jp
企業価値を守るためには、レピュテーションリスクの回避が不可欠です。企業は潜在的なリスクを最小限に抑え、万が一の事態にも迅速かつ適切に対応できる体制を整える必要があります。
■社内教育による従業員の意識改革
社内のコンプライアンス意識が低い場合、個人データの持ち出しやバイトテロ、粉飾まがいの決算などが行われる確率が高くなります。社内教育を通じて、自らの行動が企業の評判に直結することを認識してもらう必要があるでしょう。
具体的には、コンプライアンス研修や不正防止教育などを継続的に実施し、従業員の意識改革を図ります。また、ネットリテラシーが不足すると、情報漏えいやSNSの炎上、名誉毀損といったトラブルを起こしやすくなるため、ネットリテラシー教育を実施するのも有効です。
■情報の監視体制の強化
レピュテーションリスクは、情報の拡散によって一気に顕在化する傾向があります。企業は自社に関する情報を常にチェックし、潜在的なリスクを早期に発見する工夫をしましょう。
具体的には、ソーシャルメディアや口コミサイトなどのオンライン上の評判を常にモニタリングできる体制を構築します。AIを活用したWebリスクモニタリングツールを導入すれば、ネガティブな投稿や炎上の兆候をタイムリーに察知できます。
また、社内外の情報源から得られたデータを分析し、リスクの傾向や特徴を把握することも重要です。問題が大きくなる前に適切な打ち手を講じれば、企業価値の毀損を防止できます。
■レピュテーションマネジメントの実施
レピュテーションマネジメントとは、企業が自社の評判を戦略的に管理することです。『評判管理』とも呼ばれ、以下のような取り組みが含まれます。
- 良いレピュテーションを形成する
- 良いレピュテーションを維持する
- ネガティブなレピュテーションから信頼や評判を回復させる
特に重要なのが、ネガティブなレピュテーションを受けたときの対応です。悪いうわさは良いうわさよりも広がりやすいため、迅速に動く必要があります。マニュアルを作成したり、模擬訓練を行ったりして、緊急事態に対応できる体制を構築しましょう。
