ビジネスシーンでは、「退社」という言葉を耳にすることもあるだろう。退社という言葉には「帰宅」と「退職」の2種類の意味があり、さらに退社には「帰社」「辞職」「離職」「退勤」などの多くの類義語がある。
これらの類義語は似ているようでそれぞれに意味があるため、ビジネスシーンではそれぞれの言葉を正確に使い分けなければならない。使い方を間違えると相手方に言いたいことがうまく伝わらず、勘違いされる場合もあるので注意が必要だ。
本記事では、退社の正しい意味や、退職や退勤などの類義語との違い、ビジネスシーンでの使い方について解説する。
退社の意味とは
退社には、業務を終了して会社を出る「帰宅」の意味と、会社を辞める「退職」の意味の2種類の異なる意味を持った言葉である。退社という言葉を使う場合は、どちらの意味の言葉として使っているのかを相手に伝わるように話すことが重要だ。
どちらの意味で使っているのかを配慮せずに曖昧な表現で退社という言葉を使うと、相手に自分の意思が伝わりにくくなるため、事情をはっきりと伝えることが大切である。
ここでは「帰宅」の意味である退社と「退職」の意味である退社について詳しく解説していくとともに、それぞれの使い方の例文をあげていく。
■退社とは原則「帰宅」の意味
退社の2つの意味のうち、原則ビジネスシーンでよく使われるのは「帰宅」という意味の退社である。ただし、原則「帰宅」の意味でよく使うからと言って、相手方がすべて「帰宅」という意味の退社と理解してくれるわけではない。
ビジネスシーンでは、正確に言葉の意味を伝えなければ誤解を生み、状況によってはトラブルなどに発展してしまう可能性もあるので注意が必要だ。確実に相手方に「帰宅」という意味の退社と理解してもらうためには、言葉を補足して状況をはっきりと伝える配慮が大切である。
例えば、「帰宅」という意味の退社の場合は、「本日は」などの言葉を補足することで、間違った意味として捉えられることが少なくなる。
ビジネスシーンでは、「帰宅」という意味の退社を以下の例文のような意味で使用する。
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■「退職」として使われることもある
ビジネスシーンで使われるのは「帰宅」という意味の退社が多いが、「退職」という意味での退社として使われることもある。退社と聞くと「帰宅」という意味の退社だと思う人がほとんどだが、それだけにビジネスシーンで退社を「退職」という意味で使う場合には、相手方に違う意味で捉えられないように注意しなければならない。
きちんと意味を相手方に伝えるように注意を怠ると、ビジネスシーンではすぐにトラブルなどに発展してしまうため、言葉を補足して状況をはっきりと伝える配慮が大切である。退社を「退職」という意味で使う場合には、誤解されないためにも退職した時期を具体的に補足して相手方に伝えることが重要だ。
ただし、会社によっては退職日を伝えることを禁止している場合もあるため、ケースによっては昨年や一昨年など広い範囲での時期を補足して誤解をうまないようにすることもある。
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退社と混同しやすい表現
退社には、似たような意味で使い方を間違えてしまうようないくつかの類義語がある。例えば、退社の類義語としてあげられる言葉は、「帰社」「辞職」「離職」「退勤」などだ。
これらの退社の類義語とされる言葉は、どれもビジネスシーンではよく使われる言葉であるため、使い方を間違えると大変な問題が起こってしまう可能性がある。そのため、それぞれの退社の類義語とされる言葉の意味をよく理解して、場面ごとによって最適な言葉を選択しなければならない。
ここでは、退社の類義語としてあげられる言葉である「帰社」「辞職」「離職」「退勤」のそれぞれの意味について詳しく解説していくとともに、それぞれの使い方の例文をあげていく。
■帰社
帰社とは、外出先から会社に戻った状態のことで、会社に帰ってきたという意味である。一方、退社とは、仕事を終えて帰宅することであり、会社から家に帰るという意味だ。
会社に戻る場合に使用する言葉が「帰社」で、会社から家に帰る場合に使用する言葉が「退社」であるため、ビジネスシーンで間違えないように使うことが大切だ。会社に戻る場合に使用する言葉である「帰社」の対義語は、会社に行く場合に使用する「出社」である。
また、帰社という言葉は、一般的には同僚や仲間に使う言葉であるため、取引先などには帰社という言葉を使わないことが適切だ。帰社は自分よりも目上の方に使うには不適切な言葉であり、目上の方へは「会社にお戻りになられた。」などの言葉を使うのが一般的である。
ビジネスシーンでは、「帰社」という言葉を以下の例文のような意味で使用する。
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■辞職
辞職とは、辞職願(辞表)に使われるように自らの意思で仕事を辞めるという意味である。一方、退社とは、会社を辞める「退職」の意味のことであり、自らの意思だけで仕事を辞めるだけではなくすべての退職が含まれる。
辞職と退社についても、意味をよく理解してビジネスシーンで間違えないことが大切だ。仕事を辞めるという意味では辞職と退社も同じであるが、辞職は一般社員が辞める場合にはあまり使われないのが一般的である。
多くは役職者や役員などの重要な職責を担っている社員が、自分の意思で仕事を辞める場合に使われる。自ら仕事を辞める「辞職」の対義語は、自ら仕事に就く「就職」である。
ビジネスシーンでは、「辞職」という言葉を以下の例文のような意味で使用する。
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■離職
離職とは、ハローワークの離職票などで使われるように退職や失業により仕事から離れている状態の意味である。一方、退社とは、会社を辞める「退職」に焦点をあてた言葉であり、現在職から離れていることにも使える離職とは多少使える範囲が異なる。
離職という言葉は、リストラや解雇などの理由で仕事を辞める場合にも使える言葉だ。離職と退社についても、意味をよく理解してビジネスシーンで間違えない注意が必要である。
「離職」という言葉は、以下の例文のような意味で使用する。
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■退勤
退勤とは、退社と同じ意味で使われがちですが、業務を終えるという意味であり退社とは微妙に意味が異なる。一方、退社とは、会社を出るという意味であり、例えば会社を出た後に取引先に寄っていた場合には、会社を出た時が退社あり取引先を出て業務を終了した時が退勤である。
退勤と退社についても、意味をよく理解してビジネスシーンで間違えないことが大切だ。
「退勤」という言葉は、以下の例文のような意味で使用する。
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電話で「退社」を使うときの注意点
ビジネスシーンで退社という言葉を使う場合、相手方に違う意味に取られないように注意しなければならない。
特に電話での応対時に、退社という言葉を使うことが多い。ここでは、電話で退社を使うときの注意点について解説していく。
■注意点
電話で退社を使うときの注意点としては、基本的には対面で退社を使う時と同様だ。
ただし、電話の場合は、音声のみで相手方に伝えなければならない。
そのため、帰宅の意味の退社の場合は翌日の出社時刻、退職の意味の退社の場合は辞めた時期などの補足情報をわかりやすく伝えることが注意点になる。
また、電話で退職の意味の退社を伝える場合には、相手方に違った解釈をされないように退社よりも退職という言葉を使った方が良いかもしれない。
■電話の相手に伝えやすい例文
電話で退社という言葉を使う場合は、以下の例文を使用すると相手方に伝わりやすくなる。
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まとめ
退社という言葉には、「帰宅」という意味の退社と「退職」という意味の退社の2種類の意味がある。また、退社には「帰社」「辞職」「離職」「退勤」などの多くの類義語があり、それぞれ少しずつ意味が違っている。
ビジネスシーンでは、言葉の意味を理解していないで使用するとトラブルに発展する可能性があるため、似たような意味の言葉でもきちんと意味を理解して使用することが大切だ。
文/小島 章広
信用金庫に8年、システム開発の会社に現在まで20年以上勤務。社会保険労務士・行政書士の資格を保有し、人事労務関係、社会保険関係の記事を中心に7年以上執筆活動を続けている。