顛末(てんまつ)とは、物事の始めから終わりまでを時系列に説明することだ。ビジネス上では、報告をするときや新しいプロジェクトの進捗を報告するときなどに用いる
また、顛末は現状を客観的に分析し、今後に向けた改善を行う手段として用いられることもある。
今回は、顛末の意味やビジネス上で使う具体的な場面などを解説する。
顛末とは
「顛末(てんまつ)とは、物事の始まりから終わりまでの経緯や、出来事全体の流れを指す言葉だ。
ビジネスの場面において、トラブルや問題が発生したとき「なぜ発生したのか」を、始めから最後まで説明するときに顛末として報告することがある。ほかにも、取引交渉の状況を職場内で共有するときも、顛末という言葉を使うことがある。
発生した問題の発端や対応の過程、最終的な解決までの流れを事細かに報告することが、顛末といえる
■顛末と結末の意味の違い
「顛末」と似た言葉に「結末」がある。顛末は物事の始まりから終わりまでの全過程を意味する一方で、「結末」は物事の最後の状態や終わりの部分のみを意味する。
つまり、結末だけでは結論の部分しか知ることができず、物事全体の流れを掴めない。
ビジネスで「顛末」を使う場面としては、経緯の説明が必要である状況が考えられるだろう。一方で、「結末」を使う場面としては、結論の部分だけ報告すればよい状況が考えられる。
■ビジネスシーンの顛末の使い方
ビジネスシーンにおける顛末の使い方として、具体的な例を考えてみよう。
顛末を報告するときはメールや書面が多いと考えられるが、時系列で記載して物事の発端から結論まで、一連の流れを解説する必要がある。
使い方1:顧客クレーム対応の顛末報告
まずは、顧客クレーム対応の顛末報告に関する顛末書の例を紹介する
【発生日時】
2024年10月15日 【内容】 商品の納期遅延に関する苦情 【経緯】 10/15 お客様より納期遅延のご指摘 10/16 社内で原因調査を実施 10/17 物流会社との確認作業 10/18 お客様へ経緯説明と謝罪 【結果】 代替品の即日発送と送料無料対応 次回購入時の10%割引券進呈 |
問題やトラブルが発生したとき、上司や上層部へ報告することがあるだろう。
顛末を伝えるためには、時系列で出来事を記載し、どのような結果になったのかを記す必要がある。
使い方2:新システム導入の顛末について
続いて、社内に新システムを導入した際における顛末の例を挙げる。
【内容】 新システムの導入 【期間】 2024年4月~10月 【主要経過】 4月:要件定義完了 6月:設計フェーズ終了 8月:テスト開始 10月:本番稼働 【予算執行状況】 計画比98% 【今後の課題】 保守体制の確立 |
業務に関して提案をした際に、どのような過程で進み、どのような結果が得られたのかを報告する際に用いることがある。
使い方3:取引交渉の顛末
取引交渉の際における顛末の例を見てみよう。
【交渉期間】 2024年7月~10月 【交渉経過】 7/1 初回面談実施 8/15 条件提示 9/20 契約内容すり合わせ 10/1 最終合意 【合意内容】 商品の相互供給 技術ライセンス契約 【今後の展開】 11月より本格稼働開始を予定 |
このように、顛末を報告する際には、単なる結果だけではなく意思決定の過程や具体的な対応も説明する。
客観的な事実を伝え、今後の展開や課題を明文化することで、業務改善につなげる役割を果たしている。
■顛末書とは
ビジネスの場面において、問題やトラブルが発生したとき、状況や問題を把握するために顛末書を書くことがある。
具体的には、以下のようなケースが考えられるだろう。
- 業務上でミスが発生したとき
- 業務上で事故やトラブルが発生したとき
- 法令や社内規定違反を犯したとき
- 重要な取引を記録するとき
- 組織変更の経緯を記録するとき
出来事の経緯と結果を時系列で詳細に記録し、改善すべき点をあぶり出すことで、事業活動を円滑に進める役割を果たしている。
また、問題やトラブルが発生したときだけでなく、重要な業務の進捗状況を報告するときも顛末書を作成することがある。
なお、具体的な記載例は以下のとおりだ。簡単な顛末書と、詳細に記載された顛末書の例を紹介するので、参考にしてみてほしい。
商品誤発送に関する顛末書 作成日 2024年10月31日 作成者 物流部 課長 〇〇 事案の概要 10月15日、A社納品分としてB社向け商品を誤発送 経緯 10/15 09:00 出荷作業開始 10/15 10:30 誤発送発生 10/15 14:00 B社より指摘を受けてご発送が発覚 10/15 14:30 A社へ状況説明 10/15 15:00 両社への対応策提示 原因
対応措置
再発防止策
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顛末書 件名 製品不具合に関する苦情対応の件 発生日時 2024年10月15日 14時30分頃 報告者 製造部 品質管理課 〇〇 顧客 株式会社ABC商事 購買部 〇〇様 発生状況 当社製品「〇〇」(製造番号:△△)において、電源投入後30分程度で突然シャットダウンする症状が発生。 顧客先での業務に支障をきたし、10月15日14時30分頃、顧客担当者様より苦情のご連絡を受領。 原因
対応内容 10月15日 14:30 顧客よりクレーム受付 15:00 社内緊急会議実施 16:00 顧客訪問、謝罪及び代替機提供 10月16日 10:00 不具合品の詳細分析開始 15:00 原因特定 10月17日~20日 同様の症状が発生する可能性のある製品の洗い出し 製造工程の見直し及び改善策の立案 再発防止策
今後の対応 同型製品をご使用の全顧客様への事前告知と予防的交換の実施 品質管理マニュアルの改訂 社内教育の実施(11月中旬予定) 所感 今回の事案では、製品の品質管理における重大な課題が明らかとなりました。 幸い、顧客様の迅速なご報告により、大事に至る前の対応が可能となりましたが、当社製品の信頼性に関わる重要な問題として真摯に受け止めております。 |
このように、顛末書は客観的に事実のみを記載し、数値や日時を正確に記載する必要がある。重要な出来事を漏らさず、因果関係がわかるように意識することも大切だ。
顛末書は、再発防止の検討材料にもなる。取引先への報告としても使われることがあるため、誰が見てもわかるように書くべきだ。
なお、顛末書を書くのは当事者であるとは限らず、担当部門の長が書くこともあり得る。
受取手形の顛末も覚えておこう
会計業務に携わっている方であれば、受取手形の顛末について知っておく必要がある。受取手形の顛末とは、受取手形が最終的にどのような結果になったのかを示すことだ。
例えば、通常どおり決済完了した場合、以下のように仕訳を行う。
借方 |
貸方 |
||
当座預金 |
100,000 |
受取手形 |
100,000 |
支払い不能で手形が戻ってきた(受取手形が不渡りになってしまった)場合、以下のように二段階で仕訳を行う。
借方 |
貸方 |
||
不渡手形 |
100,000 |
受取手形 |
100,000 |
借方 |
貸方 |
||
受取手形(売掛金) |
100,000 |
不渡手形 |
100,000 |
受取手形の顛末を会計上に反映させるためには、適切な勘定科目を使用して、金額の正確な記録をすることが大切だ。
まとめ
「顛末を報告する」という行為は、ビジネスマンであれば行う場面があると考えられる。顛末を報告するときは、メールでも書面でも事実を客観的に伝えることが大切だ。
また、起きた出来事の原因や今後に向けた改善点なども伝えるとよい。
こちらの記事で紹介した記入例を参考にしながら、正しい顛末の伝え方・書き方を押さえておこう。
文/柴田充輝
厚生労働省、保険業界、不動産業界での勤務を経て独立。FP1級、社会保険労務士、行政書士、宅建士などの資格を保有しており、特に家計の見直しや資産運用のアドバイスのほか、金融メディアで1000記事以上の執筆を手掛けている。