「つまらないものですが」と言いながら、お土産やプレゼントを渡した経験はありませんか。
相手を立ててへりくだった気持ちを表現するために使うフレーズですが、近年ではあまり使わないほうがよいとされることが多いようです。
「つまらないものですが」はビジネスシーンや目上の人に対して不適切な言葉なのか、わかりやすくご紹介します。また、言い換え表現もご紹介するので、ぜひ使ってみてください。
「つまらないものですが」の意味は?
「つまらない(詰まらない)」とは、とりあげる価値がない、大したものではないという意味です。自分が持ってきた品物をあえて「価値がないもの」と表現することで、相手に対してへりくだった気持ちを表現します。
「つまらないものですが」の使い方
「つまらないものですが……」と相手に品物を渡すときは、以下の言葉を続けることが多いです。
・お収めください
・ご笑納ください
・ご受納ください
それぞれの使い方について見ていきましょう。
参考:デジタル大辞泉
■お収めください
「お収めください」は、収めることを意味する「収め」に、動作主への尊敬の意味を示す「お〇〇ください」を組み合わせた言葉です。「受け取って自分のものにしてください」といった意味で使えます。
【例文】
・つまらないものですが、お収めください。
・今月分の家賃です。お収めください。
参考:デジタル大辞泉
■ご笑納ください
「笑納(しょうのう)」とは、人に贈り物をするときに、「大したものではありませんが、お気を悪くせず、寛容に受け取ってください」という気持ちを込めるときに使う言葉です。
動作主への尊敬の意味を示す「ご〇〇ください」を組み合わせることで、丁寧に表現できます。
【例文】
・つまらないものですが、ご笑納ください。
・別便によりお送りしました品、ご笑納ください。
参考:デジタル大辞泉
■ご受納ください
「受納(じゅのう)」とは、贈り物の金品などを受け取って納め入れることです。
動作主への尊敬の意味を示す「ご〇〇ください」と組み合わせて「ご受納ください」とすると、「お受け取りください」の意味がある丁寧な表現になります。
【例文】
・つまらないものですが、ご受納ください。
・入口で参加賞をお渡ししております。ご受納くださいませ。
参考:デジタル大辞泉
「つまらないものですが」が好ましくないとされる理由
「つまらないものですが……」は、相手へのへりくだった気持ちを示す慣用的な表現のため、間違った言葉ではありません。また、相手に渡す品物とはいえ、元々は自分に帰属している品物のため、謙譲の意味を込めて「つまらない」と表現するのは控えめさの表れともいえます。
しかし、「つまらない」と表現した品物は、相手に渡すことで相手の所有物になります。つまり、時間差はあるものの、いずれ相手のものになるものを「つまらない」と断じてしまうのは、失礼にあたるかもしれません。
また、「つまらないものを人に渡すのは失礼」という考え方もあります。相手のことを思うなら、本当に素晴らしい品物だけを渡すのが礼儀です。
さまざまな考え方から、「つまらないものですが……」の表現は好ましくないとされることがあるため、別の表現で置き換えることも検討してみましょう。
「つまらないものですが」の代わりに使いたい表現
「つまらないものですが……」は、相手にへりくだった気持ちを示す表現のため、決して間違っているわけではありません。しかし、相手によっては、「大したものではない品物をくれるなんて失礼」と受け取られてしまう可能性があるため、言い換えの表現を使うほうがよいかもしれません。
「つまらないものですが……」の代わりに使える表現としては、次のものが挙げられます。
・(お菓子などの食べ物の場合)お口に合いましたら幸いです
・気に入っていただけましたら嬉しく存じます
・ささやかなものですが……
それぞれの使い方をご紹介します。
■お口に合いましたら幸いです
お菓子などの食べ物を渡すときは、「つまらないものですが……」と言い切ってしまうと、「おいしくないものなの?」と相手に不安を与えるかもしれません。
しかし、「おいしいですよ」と自信たっぷりに言い切ってしまうのも謙遜がなく、あまりよい表現とはいえないでしょう。
「よいものではあるけれども、おいしいと思ってもらえるかはわからない」というニュアンスを表現するためにも、「お口に合いましたら幸いです」と言ってみてはいかがでしょうか。
【例文】
・長野県に旅行でお土産を買ってきました。お口に合いましたら幸いです。
・さくらんぼをお送りいたします。お口に合いましたら幸いです。
■気に入っていただけましたら嬉しく存じます
相手に気に入ってほしいという気持ちを伝えるためにも、「気に入っていただけましたら嬉しく存じます」と伝えるのもおすすめです。食べ物だけでなく、衣類や小物などの身につけるものをプレゼントするときにも使えます。
【例文】
・寒くなってきましたね。カーディガンをお送りしました。気に入っていただけましたら嬉しく存じます。
・リンゴジュースをお取り寄せしましたので、おすそ分けです。気に入っていただけましたら嬉しく存じます。
■ささやかなものですが……
「ささやか(細やか)」とは、控えめな様子や形ばかりで粗末な様子を意味する言葉です。謙遜して用いることが多いため、相手にプレゼントを渡す際にも使えます。
ちょっとしたお土産や、値段が高すぎないものを渡すときなら、過剰に謙遜していることにもなりません。
【例文】
・ささやかなものですが、お受け取りください。
・旅行に行ってきました。ささやかなものですが、お土産です。
参考:デジタル大辞泉
過剰にへりくだらずに気持ちを伝えよう
相手に尊敬の気持ちを示すために、へりくだるのは間違ったことではありません。しかし、過剰にへりくだっていると受け取られてしまうと、かえって相手に不快な気持ちを与えてしまうことがあります。
「喜んでほしい」という気持ちを素直に表現するためにも、「つまらないものですが……」以外の表現も使ってみてください。
構成/林 泉