「2025年の崖」とは2018年に経済産業省が「DXレポート」で提示したキーワードだ。
これは、DXを推進できず国際競争力を失う問題を指しており、2025年以降に大きな経済損失が発生すると予測されることから、警鐘を鳴らす意味を込めて「2025年の崖」と呼ばれている。
なかでも、過去の技術や仕組みで構築されている「レガシーシステム」が課題とされており、そのまま維持し続けると“データを正しく利活用できない”や“サイバーセキュリティやシステムトラブルのリスクが高まる”などといった問題により、2025年以降に最大12兆円/年の経済損失が生じるということが発表されている。
Colorkrew(カラクル)は、経済産業省が示す「2025年の崖」のタイムリミットまであと半年となる2024年6月、全国の会社経営者・役員・正社員・契約社員・公務員1,000名を対象に「2024年 働き方に関するアンケート調査」を実施し、日本の企業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の進捗状況を明らかにしたので、詳細をお伝えしよう。
そもそも“DXとは、何かがわからない”ひとが続出!? 職場のデジタル化や文化の変化に顕著な世代間ギャップ
「すでにDX化できている」と答えたのは6.1%にとどまり、29.3% の「特に取り組んでいない」が一位に。続いて「わからない(24.6%)」がランクインした。
一方で、職場におけるDXの必要性についてどのように感じているかという問いに対しては、「DXは重要」と答えたのは46.6%、「どちらともいえない」が36.2%と上位をせめぎあっていた。
なお、DXは重要だと答えた人の中には「無駄な仕事が多すぎるので働き方改革、業務効率化、両方を実現するためにとても重要だと思う。(会社員/42歳)」というコメントも。
重要性を感じながらも“進まないDX”にもどかしい気持ちを抱くひとがいる一方で、そもそも“DXがなにか、わからない”というコメントが「どちらともいえない」と答えた回答者に、散見された。
DXと密接に関わりがあるのが、「デジタル化」。世代ごとに、デジタル化に対応できているか否か尋ねたところ、それぞれ一位になる数字が異なり、世代間ギャップが見えてきた。
「対応できている」に、一番票が集まった若手社員からは「できている人は自分で調べるなどしている。できていない人は自分でどうにかしようとしていない。(正社員/26歳)」といった、辛辣なコメントも。
逆に「対応できていない」に一番票が集まったベテラン社員からは、「年齢とともに、デジタル関係のことが面倒になってくる。特にセキュリティ強化のために手続きが増えているのが面倒。(正社員/58歳)」という理由から、新しいシステムを導入することに気持ちがのらないようだ。
「働き方改善へとつながるDX化が進まないと離職を考えますか?」という問いについては、約3人に1人が「離職を考える」という結果が現れ、進まないDXによる人材流出の恐れが示唆された。
また合わせて、DXに求めることを尋ねると「データやデジタル技術を活用して、より効率のよい業務プロセスへ改善されること(23.9%)」が、最も高い結果に。
既にDXを取り入れているという会社に勤めるひとは「適度にデータのデジタル化が進んでおりトラブル解決の度に改善策が色々提案されるようになった。(公務員/56歳)」という、ポジティブな言葉が寄せられていた。
コミュニケーションを取りたがらない、若手社員とベテラン社員の溝に困惑する中堅社員の実態
次にカラクルでは、DXの導入傾向やデジタルへの順応力を踏まえ、より具体的にどんな部分で「業務改善」が必要かを深掘りすべくデータを分析。
昨今話題となっている「若手社員」と「ベテラン社員」の間で生じる”ジェネレーションギャップ” によって、「中堅社員」が抱える“名もなき仕事※”や苦悩が見えてきた。
若手とベテラン、両方の気持ちがわかるハイブリッドな価値観を持ち合わせる彼らが求める、「働き方改革」とはいったいどのようなものなのだろうか。
※名もなき仕事:ひとにこんな仕事をしていると伝えづらい、スキマ仕事。
つづいて、働いている人であれば誰もが一度は経験する、サービス残業や休日出勤について、「仕事が終わらなければ、仕方ないか」と質問した。
仕方なし派についたのはベテラン社員の35.3%と最も高く、仕事が終わらなくても、休日出勤はすべきでないという意見を最も持っているのは、若手社員の44.5%という結果に。
また、その間で調整する中堅社員からは「休みがちな若手に1年目は有給が数日しかないと伝えると、有給は無限にあると思っていたと言われました。(正社員/39歳)」という衝撃的なエピソードも。
今回のアンケートでは上記のようなエピソードから、若手とベテランの狭間で困惑する中堅社員がいることが明らかになっただけではなく、データ上で見ても、異なる価値観に向き合う職場のリアルが見えてきた。
具体的には「自分でなくてもよいと思える仕事は、極力避けているか」という質問に対しては、37%と「当てはまる」傾向をみせたのは、ダントツで若手社員。
一方で、ベテラン社員は、「どちらとも言えない(42%)」というジレンマや、「当てはまらない派(35.8%)」が多く見受けられ、時代変化によって乖離が生じていた。
2020年の新型コロナウイルス感染症によって、急変した「働き方」。慣れないリモートワークが導入され困惑しながらも、よりよい働き方や暮らし方について見直したひとも多いのではないだろうか。
しかし、昨年5月にコロナが5類感染症に変更となったことをきっかけにして、出社に切り替えた企業が増えてきた2024年。
今回の調査データでは、コロナ禍での巣篭もり生活ゆえに、対面のコミュニケーションに慣れない若手と、長年出社が義務付けられていたベテラン社員との間で生じている2つのデータに注目した。
まず、意見が分かれたのは「自由な働き方とは「好きだ」と思う仕事だけ、やることか否か」という問い。
そう思うと答えた若手社員が35%に対して、ベテラン社員の45.1%がそう思わないと回答する結果になった。
また、その実態を裏付けるように「お昼休憩も取らず汗水垂らし働けという上司と、始業ギリギリまで来ず仕事量も少ない若手社員の狭間で、面倒事は常に自分に押し付けられていた。(正社員/28歳)」という、価値観ギャップによって仕事が増えたことを嘆く、中堅社員のエピソードも。
つづいて、「オンラインミーティング」の価値観に関する設問では、オンラインミーティングの方が「手軽で楽である」と回答したのは、若手社員43.5%が全体で最も高く、一方でベテラン社員は「どちらとも言えない」が一番高い傾向にあった。
中堅社員からは「若手は対面でのミーティングや会議を嫌がるため、上司の指示でなぜ嫌なのかをヒヤリングするよう言われた。(正社員/41歳)」という、わかり合いたいベテラン社員の気持ちも、中堅社員が代弁する事態に。
このように若手社員とベテラン社員のコミュニケーションを中堅社員が繋いでいることはデータとしても明らかで、「あなたが日頃から特に信頼をして相談をする上司や先輩の年齢を教えてください」という若手社員に対する質問に対して、26.5%で一位にあがったのは25歳~29歳の中堅社員であった。そして、そこから右肩下がりでベテラン社員に。
一方で、中堅社員にとっては信じられない相談内容が若手社員から多く、「会議が伸びて予定があるので、帰宅して良いかと言われた。(公務員/41歳)」や「(若手が)体調が悪くて休みたい事を、上司に言うタイミングをはかってほしいと頼まれた。(正社員/28歳)」といった声があげられていた。
また、「会社の飲み会」問題については、度々“(上司がいる飲み会には)若手が参加したくない”傾向にあるというニュースをよく見かけるが、今回の調査結果ではベテラン社員の方が、部下との飲み会は好きではないという事実が顕著に現れていた。
調査概要
調査名称:株式会社Colorkrew「2024年 働き方に関するアンケート調査」
調査手法:インターネットアンケート
対象:全国の会社経営者・役員・正社員・契約社員・公務員1,000名
調査期間:2024年4月11日(木)~4月12日(金)
調査主体:株式会社Colorkrew
関連情報
https://www.dev.colorkrew.com/campaign/dx-leave-job/
構成/Ara