周囲に流れるたばこの煙を吸う受動喫煙による肺がんの発症は、本人が喫煙する能動喫煙とは異なるメカニズムの遺伝子変異を誘発して起こることを国立がん研究センターなどの研究グループが明らかにした。炎症により特定のタンパク質が活性化することで変異が生じる。今後は大規模な調査に基づき、子どもと成人してからの受動喫煙によるゲノム情報の違いについて研究を続け、肺がん予防や薬の投与戦略などに生かしたいという。
たばこを吸うと肺がんになりやすい。例えば発がん性物質の一種であるベンゾピレンと呼ばれる物質がDNAに作用し、DNA中のC(シトシン)がA(アデニン)に変異してしまう。この「たばこ型変異」よりがんが発症する。一方、受動喫煙については肺がん発症のリスクとなっていることは認知されていたものの、発症に至るメカニズムは分かっていなかった。
国立がん研究センター研究所ゲノム生物学研究分野の河野(こうの)隆志分野長(がんゲノム学)らのグループは、発症のメカニズムを解析するため、肺がん患者の調査を行った。10代と30代のいずれか、あるいは両方で「受動喫煙を受けて...