■連載／ヒット商品開発秘話
利便性の高さからスキンケア市場で伸張しているのが、複数の機能を持つオールインワンジェル。中でも人気が高いのが、シワ改善効果があるタイプである。
エイジングケア（年齢に応じた手入れ）に特化したコーセーコスメポートのスキンケアブランド『グレイスワン』から2022年9月に発売された『リンクルケア ホワイト モイストジェルクリーム』（以下、リンクルケア ホワイト）も、オールインワン。シワを改善する効果とシミを予防する効果が認められている。
『グレイスワン』独自の「プレミアム濃潤コラーゲン CPX」を配合。顔や首に伸ばしやすく、みずみずしい潤いが肌に伸び広がる。これまでの累計出荷数量は80万個を超えている。
グレイスワン リンクルケア ホワイト モイストジェルクリーム（医薬部外品）。1品で7役（化粧品・美容液・乳液・クリーム・マッサージ・アイクリーム・ネッククリーム）の機能を持ち合わせている。価格は3520円（コーセグループオフィシャルストア『Maison KOSÉ（メゾンコーセー）』にて。以下同）
シワやシミは目立つ前からケア
『リンクルケア ホワイト』は同じく『グレイスワン』から2019年12月に発売されたシワ改善オールインワンジェル『リンクルケア モイストジェルクリーム』（以下、リンクルケア）を発展させたものである。
『リンクルケア』はマスブランド化粧品（カウンセリングを必要としない中低価格の化粧品）で初めて、シワ改善効果を謳ったもの。有効成分としてナイアシンアミドを配合しており、顔から首にかけてのあらゆるシワをケアしてふっくらしたハリとツヤのある肌に導く。
『グレイスワン』ブランドの一番の売れ筋で、『リンクルケア ホワイト』と合わせると、累計出荷数は300万個を超える。
グレイスワン リンクルケア モイストジェルクリーム（医薬部外品）。同じく1品で7役の機能を持ち合わせている。価格は3300円
『リンクルケア ホワイト』が企画されたのは2020年。新型コロナウイルスの感染拡大により自宅で過ごす時間が長くなり、スキンケアにかける時間と投資が増えてきた頃だった。
コーセーコスメポート 商品開発部第二商品開発室開発三課 課長の一糸（いと）美奈さんは『リンクルケア ホワイト』開発の理由を次のように明かす。
「2020年に実施した当社の調査で、シワやシミは目立つ前から早めのケアをすることが大事だと実感している人が増えてきていることがわかりました。スキンケアにかける時間と投資が増えたこともあり、シワを改善しながらシミも防ぐ最高品質のオールインワンを発売することになりました」
シワ改善のスキンケア商品には珍しいみずみずしい使用感の実現
『リンクルケア ホワイト』の開発でこだわったのは、効果とみずみずしい使用感の両立だった。その理由を一糸さんは次のように明かす。
「『リンクルケア』のようにシワ改善を謳ったスキンケア商品は、肌がしっとり、みっちりし、濃厚なハリが生まれることが非常に重要になります。しかし『リンクルケア ホワイト』はシミ予防の効果もあるので、春と夏にもよく使われるものになることから、みずみずしい使用感にしないと使ってもらいづらいところがありました」
みずみずしい使用感は、しっとり、みっちりとは相反するもの。『リンクルケア 』の処方を大きく変えることにした。
リンクルケア（右）とリンクルケア ホワイト（左）の中身。リンクルケアは見た目からして濃厚で使用感もしっとり、みっちりする印象を受けるが、リンクルケア ホワイトはリンクルケアほど見た目が濃くなく、みずみずしい使用感を連想させるものになっている
ブランド事業部企画二課 課長代理の對馬（つしま）広之さんは次のように話す。
「シワ改善クリームはしっかり保湿できるので、どちらかと言えば秋冬に使うのに適しており、夏に使うのはやや重く感じる人がいると思っていました。今までと同じシワ改善効果がありながらさっぱりした感じがするクリームはニーズがあるとみて、年間通して使っていただける軽いテクスチャー（質感、感触）を研究してつくり上げることにしました」
つくって検証した試作は数えきれないほど。配合する成分に含まれる油分と水分の最適なバランスがなかなか見出せず苦戦した。
