「馬脚を露わす」とは、取り繕っていた姿があらわになり、露呈されることを指すことわざだ。多人数がいる場で、馬脚を露わにした人物のようになってはいけないという注意喚起や、ビジネス・恋愛など多様に使えるのが特徴的である。
本記事では、馬脚を露わすの意味と由来、例文ほか類義語・対義語まで解説していく。馬が語句に含まれることで疑問を持っているなら、ぜひこの機会に完全な理解を目指していこう。
「馬脚を露わす」とは
馬脚を露わすとは、隠していたものが明るみに出たことを意味することわざだ。あらためて意味・由来を確認していこう。
■意味
「馬脚を露わす」を辞書で引くと、意味は以下の通りになる。 正体を表す、化けの皮が剥がれる、隠されていた本性が露わになる、といった意味の語。 |
上記から、物事の開始時ではなく、一定期間が経過したあとに本性が露呈したものだと取れるだろう。またヴェールが剥がされたというニュアンスも、馬脚を露わすと同様だ。
ただ、馬脚を出す、馬脚を晒すという認識を持つ人もいるが、左記はいずれも誤用なので注意したい。
■由来・語源
「馬脚を露わす」は、馬の足を務める役者がつい姿を見せてしまったことが由来だ。13~14世紀頃、元王朝時代の中国で流行った古典劇の一種に、悪事を働いた者が馬脚の露出するのを恐れたという一説がある。なお、古典劇は「元曲陳州糶米」の第三折によるものだ。
というように、ここで使われる「馬」は自然界に生きる馬の姿・行動を示したものではなく、演劇によるものだと覚えておこう。
「馬脚を露わす」の使い方
「馬脚を露わす」のことわざは、使えるシチュエーションにバリエーションがある。仕事・日常生活での使い方を例文と一緒に見ていこう。
■ビジネスにおける例文
ビジネスシーンで使える例文は以下の通り。
・オンライン会議のプレゼン役で、本当に彼は最適な人物とは思えない。途中から馬脚を露わすのではないかと危惧している。
一つの小さなきっかけだとしても、それが災禍になるのではないかと危ぶまれているシーン。ビジネスにおける注意喚起として使えるのも当ことわざの面白いところだ。
■日常生活における例文
日常生活で使える例文は以下の通り。
・清廉潔白と彼女は言っていたけど、友人の指摘通りだった。周囲からの信頼も崩れ始めたが、とうとう馬脚を露わすようになったのか。
真面目を装っている人に対し、外部が違うと指摘をしている。音を立て清楚なイメージが崩れ落ちていく様子を表現している。身近な人の印象が思っていたものと違った時に使えることわざである。
「馬脚を露わす」の類義語
「馬脚を露わす」にはいくつもの類義語がある。その中でも代表的なものを見ていこう。
■本性を露にする
「本性を露(あらわ)にする」は、隠されていた悪い部分が明らかになることを意味する。
繕っていた仮面が剥がれ、ボロが出た時などにも使われる表現である。
■地金が出る
「地金が出る」は、人の本性や本音が明らかになることを指す。
ここでの地金は、日本刀の鉄が剥がれ、芯が剥き出しになっている状態を語源としている。
「馬脚を露わす」の対義語
「馬脚を露わす」の理解を深めるには、類義語のみならず対義語も知っておきたい。。
■頭角を現す
「頭角を現す」は才覚が抜きん出て、周囲の人より一段と目立ち始めることを指す。語源も併せて理解したいのだが、頭の先端の角が理由にある。獣の群れの中で、大きな角が携えられていると目立つに違いないからだ。
つまりプラスの要素で満ちているのが「頭角を現す」で、一方の「馬脚を露わす」は知られてしまうとネガティブな要素に対して使われるのが理解のポイントである。
また評価される要素が徐々に浮き彫りとなるのが「頭角を現す」で、白日のもとに晒されるのが「馬脚を露わす」という覚え方も把握しやすい。
人物を注意深く見る時に使いたい「馬脚を露わす」
「馬脚を露わす」は既述の通り、化けの皮が剥がれ、隠されていた本性が露わになるという意味だ。
「動物の馬の脚があらわになる」と覚えてしまうと理解しにくいが、それが「演劇でボロが出ること」を表すと覚えれば、意味を間違えることはないだろう。
難解な字も並ばないため、日常会話や仕事の場でも容易く使っていけることわざだ。いま一度類義語と対義語の理解も深め、用途に応じて使い分けられるようになっていこう。
文/shiro