あめ色の漆に微量の鉄を加えると、闇を表すのに用いられる「漆黒」になる。その仕組みは、鉄によって漆の主成分であるウルシオールの配列が変わるから、と日本原子力研究開発機構などのグループが明らかにした。X線や中性子線などの量子ビームを駆使して解析した。今後、歴史的価値のある漆器の非破壊分析といった考古学分野から新たな触媒開発など産業分野まで、様々な応用が期待できる。
漆は縄文時代の遺跡から当時の状態をとどめて出土するほど、物質的に高い安定性をもつ。ウルシの木から採取した樹液の「生漆(きうるし)」はウルシオールと水分からなり、そのまま乾かすとあめ色になる。この生漆に微量の鉄を加えたのが「黒漆」。乾かすと、漆黒と表現される美しい真っ黒に輝く。