「心ばかりですが」という言葉を、失礼にならずに使えているか、不安になることはありませんか。高価なものを贈る際に口にしてしまうと、嫌味な印象を与えるため注意が必要です。「心ばかりですが」の意味や例文、言い換え表現をご紹介します。
「心ばかりですが」の意味は?謙遜を表す言葉
「心ばかりですが」は、日常生活やビジネスシーンで相手に贈り物をする際に、「ほんのわずかな気持ちを表したものですが」という、へりくだった気持ちを伝える表現です。口頭で伝える以外に、熨斗(のし)の表書きにも使われます。
漢字では「心許り」と表記し、「許り」には範囲を限定する「~のみ」「~だけ」の意味があります。「心ばかりですが」あるいは「心ばかりの〇〇ですが」などと使いましょう。
「心ばかりですが」の使い方
「心ばかりですが」は、使う際にいくつかの注意点があります。使い方によってはマナー違反になることもあるため、以下のポイントを押さえておきましょう。
■高価なものに対して使うと嫌味になる
「心ばかりですが」は、相手に高価なものを贈る際に使うと嫌味な印象を与えかねません。贈り物や渡すお金について、「ほんのわずかな気持ちですが」「たいしたものではありませんが」と謙遜する表現であるためです。
また、「心ばかりですが」という言葉を添えられた贈り物に対して、お返しは不要とされています。それにもかかわらず、贈られた物が高額である場合、相手に気を使わせてしまう可能性があります。
「心ばかりですが」と渡す贈り物の金額の明確な上限はないものの、概ね1万円以内を目安にするのがよいでしょう。高価な贈り物をする際には「心ばかりですが」という表現は用いず、ストレートに感謝の気持ちを伝えましょう。
■受け取る側は使わない
「心ばかりですが」は、あくまでも贈り物をする立場の者が謙遜して使う表現であり、受け取る側は使いません。
贈り物を受け取った際に「心ばかりの品物をどうもありがとうございます」と口にしてしまうと、相手が贈った品物やお金を「わずかなもの」と指摘することになり、非常に失礼です。
■目上の方に対して使う
「心ばかりですが」には、へりくだった謙遜の意味があるため、目上の方や取引先などに贈り物をする際に使いましょう。友人や部下に贈り物をする際に謙遜の気持ちを表現する場合は、「ちょっとしたものですが」「ほんの気持ちばかりですが」などと表現するのが一般的です。
■謝る際は謝罪の言葉を先に伝える
謝罪の品として贈り物をするケースでは、「心ばかりですが」と口にする前に、まずは謝罪の言葉を伝えるのが礼儀といえるでしょう。
謝罪すべき状況なのに、「たいしたものではありませんが」という意味の「心ばかりの品ですが」というと、相手をさらに不快な気持ちにさせてしまいかねません。謝罪すべき場面では、先に誠意をもって謝罪してから、贈り物を渡すようにしましょう。
「心ばかりですが」を使った例文
ここからは、「心ばかりですが」の表現を用いた例文をご紹介します。実際に使う場面を想像しながら、内容を確認してください。
■心ばかりですが受け取ってください
ちょっとしたお土産や贈り物を用意したときには、「心ばかりですが受け取ってください」と伝えるとスマートな印象を与えられるでしょう。また、お返しの内祝いを必要としない場合は、結婚や出産のお祝いを渡すときにも使用できます。
■心ばかりですが召し上がってください
お菓子などの食べ物をプレゼントする際には、「心ばかりですが」に「召し上がってください」のひとことを付け加えると、こなれた印象になるでしょう。食べ物には人それぞれ好みがあるため、「お口に合うかどうかわかりませんが」という謙遜の気持ちを表現できます。
■心ばかりですがお口に合えば幸いです
普段お世話になっている相手に食べ物を贈る場合、「心ばかりですが」の後に「お口に合えば幸いです」と加えると、相手を思う気持ちがより伝わるでしょう。「心ばかりですが、ご家族でお召し上がりください」というように使います。
■心ばかりですがお供えください
「心ばかり」は、お悔やみの場面でも使用できる表現です。「心ばかりですがお供えください」「心ばかりの御香典ですが、御霊前にお供えください」などと添えて、香典やお花を渡します。
なお、浄土真宗以外の仏教では四十九日前は「霊前」を、四十九日以降は「仏前」を使用し、浄土真宗では四十九日前でも「仏前」を使用します。相手が気を落としている状況で失礼のないように、言葉の意味や使い方を確認しておくことが大切です。
「心ばかりですが」の類語・言い換え表現
「心ばかりですが」には言い換えが可能な、いくつかの似た表現があります。それぞれの内容や使い方を確認しましょう。
■寸志
寸志は「すんし」と読み、お礼や感謝の気持ちを込めて、少しばかりの贈り物やお金を贈る際に使用します。
寸志は目上の方には使わないため、目上の方や取引先などに対しては「心ばかりですが」という言葉を添えるとよいでしょう。
参考:デジタル大辞泉
■ささやかではございますが
「心ばかりですが」の言い換えには、「ささやかではございますが」という表現が使えます。「ささやか」は「わずか」という意味があるため、品物を贈る際の謙遜の気持ちを表すのに適した言い回しです。
参考:デジタル大辞泉
■つまらないものですが
「つまらないものですが」も、「心ばかりですが」と同じような意味で用いられる言葉です。この言葉のとおり、本当につまらないものを渡すわけではありません。「あなたのような素晴らしい方にとっては、つまらないものである可能性がありますが」という、へりくだった気持ちが込められています。
■ほんの気持ちではございますが
「心ばかりですが」の類似表現としては、「ほんの気持ちですが」も挙げられます。「ほんの」は、次にくる言葉が取るに足りないものであることを表す言葉です。そのため、謙遜の気持ちを表す際の表現として適しています。
参考:デジタル大辞泉
「心ばかりですが」を正しく使いこなそう
「心ばかりですが」は相手に贈り物をする際に、「ほんのわずかな気持ちを表したものですが」という気持ちを伝える、謙遜の表現です。高価な物を贈るときに使うと嫌味な印象を与える可能性があるため、注意しましょう。そのほか、目上の方に対して使う表現であること、受け取る側は使わないことなどのポイントを押さえておくことが大切です。
使い方を間違えて失礼な印象を与えることのないよう、「心ばかりですが」の表現を正しく使いこなしましょう。
構成/橘 真咲